出版社内容情報
『民族と歴史』2巻1号の「特殊部落研究号」を新字新仮名で完全復刻。部落史研究に欠かせない記念碑的著作の初文庫化。
内容説明
歴史学・民俗学者で被差別部落研究の泰斗、喜田貞吉の個人誌『民族と歴史』第2巻1号“特殊部落研究号”の喜田執筆部分を、初刊刊行後一〇〇年、新字新仮名遣いで完全復刻初文庫化。賎民の誕生と、被差別部落の成立過程を考察し、その後の歴史及び現在の部落問題研究にも欠かせない、記念碑的金字塔。
目次
特殊部落の成立沿革を略叙してその解放に及ぶ
エタ源流考
「エタ」名義考
エタに対する圧迫の沿革
特殊部落の人口増殖
上代肉食考
青屋考
特殊部落と寺院
特殊部落の言語
特殊部落と細民部落・密集部落
来り人の地位と職業―平民申付候事
「特殊部落」という名称について
遠州地方の足洗
エタと非人と普通人
「特殊部落研究号」発刊の辞
編輯雑感
著者等紹介
喜田貞吉[キタサダキチ]
1871年、徳島県生まれ。専門は、古代史・考古学・民族学・民俗学。京都帝国大学教授、東北帝国大学講師を歴任。歴史学では、法隆寺再建論争、南北朝正閏論争で、考古学では九州北部・女山の神籠石論争で活躍した。雑誌『民族と歴史』なども創刊。アイヌ・蝦夷研究、被差別部落研究の先駆者。1939年逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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gtn
18
1919年の著作の翻刻。当時の特殊部落における人口急増の理由として、不衛生故に病気への抵抗が強く、また、生活上の困難がなかったがために早婚だったからだと強弁する。他にも縷々推論しているが、聞くに堪えない。維新後、皮革業等、産業が進展したことが原因とみる方が自然だと思うが、帝大教授の著者にはそんな発想はなかったらしい。 2021/01/04
筑紫の國造
9
「被差別部落史」研究においては画期的な著作とされている一冊。いわゆる「エタ」として差別されてきた人々が、どのような源流を持ち、いかなる理由で差別されてきたかなどを論じている。現在からみればともかく、100年前にこれだけの研究をものにした学者がいたとは非常に驚かされる。「エタ」と呼ばれた人々への差別感情はそれほど古いものではなく、蔑視される一方で人が嫌がる仕事をしてもらう以上、必要な存在でもあったという。差別の淵源を異民族に求める俗論も一蹴している。現代を考察するためにも、読む価値のある一冊。2019/09/10
ブルーツ・リー
0
差別が強い時期に被差別部落に入った学者による反差別を訴える書。 今からすると「エタ部落の努力によって差別を超えるべし」というのは酷なような気はするものの、昭和初年付近の、人を人と思わないような世界にあっては、かなり、頑張った内容なのではないかと思われた。 それから100年近く経った今でも部落差別は残っており、部落解放同盟の努力もあるものの、年月の間での風化によって差別が無くなってきている。というのが実際の所ではある。 差別や暴力は、猿の子孫としての人類の業であるのかと悲観的にならざるを得ない。2024/01/21
Tsuneyuki Hiroi
0
歴史上、被差別者はどのような人々かと言うことを明らかにしながら、身分と血筋が必ずしも固定的でないことを明らかにしている。 そもそも、差別は差別する側の都合で生じる者であって、差別される側にはなにも背負うべき責任はない。 特に部落差別は、同じ民族の間に生ずる者である。差別は差別する側によって正当化されている状況、もし差別をなくすには、その正当化された状況を覆さなければならないのである。2021/02/16
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