出版社内容情報
若者が恋愛も結婚もしなくなり、国はお見合い制度「アカガミ」を立ち上げた。ミツキはアカガミを通じて恋愛や性を知るのだが……。
窪 美澄[クボ ミスミ]
著・文・その他
内容説明
渋谷で出会った謎の女性に勧められ、ミツキは国が設立したお見合いシステム「アカガミ」に志願した。異性と話すことすらままならない彼女にとって、国の教えはすべてが異様なもの。パートナーに選ばれたサツキとの暮らしを通じて、次第に恋愛や性を知り、「新しい家族」を得たのだが…。手厚いサポートに隠された「アカガミ」の真の姿とは?生きることの選択と生命の躍動に触れる衝撃作!
著者等紹介
窪美澄[クボミスミ]
1965年、東京都生まれ。広告制作会社、フリーの編集ライターを経て、2009年「ミクマリ」で女による女のためのR‐18文学賞大賞を受賞してデビュー。11年、受賞作を収録した『ふがいない僕は空をみた』で山本周五郎賞、本屋大賞2位に選ばれる。12年、『晴天の迷いクジラ』で山田風太郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
507
近未来の日本。性どころか生にさえ興味を失ってしまった若者同士を番わせて赤ん坊を作るという計画が、政府によって実行される。あり得ない設定ではないのだが、作中わざわざ「番う」「まぐわう」をこれでもかと連呼するのは、果たして窪さんの意図なのか。デビュー作以来の窪さんの一貫したテーマは通(かよ)っているし、SF分野へのチャレンジは買うが、いろいろな意味で最後までモヤモヤした今作だった。2021/11/25
hit4papa
117
若者が生と性に興味を失った近未来が舞台です。自死が増加し、男女がお互いを求めなくなったというシチュエーションは、あり得る日本の姿なのかもしれません。ここでは、国が全面的に男女のカップリングをサポートしています。物語は、これに応募した見知らぬ男女の関係性が主軸となって展開します。ぎこちない二人が寝食を共にするうちにやがて愛が生まれ、”番”(つがい)となり”まぐわ”い、そして・・・。本作品は、ディストピアものとしてみて見ることができますが、ラストはもう一つ欲しいのですよ。キーマンぽい人の絡みも不満が残ります。2022/02/23
りゅう☆
116
若者の性と生への興味が薄れ寿命が40歳までもたないかもしれない。好きになった相手に触れたい、抱き合いたい感情が全くないって恐ろしい。ミツキはマッチング相手と番い、まぐわって家族を作る国の対策アカガミを志願。身体検査など徹底した管理、不自由ないサツキとの生活。一緒に暮らすうちにお互い惹かれ合う。不安と怖さしかないまぐあいをやっと終えた二人が迎えた妊娠。喜びと不安の中アカガミから今まで以上の手厚い待遇。この展開に胸騒ぎしかしない。予想通りの思惑。弱い部分も含めたサツキが最後までしっかり自分を持っててよかった。2021/01/21
mmts(マミタス)
105
東京オリンピックが終わった近未来の日本。しかし、若者は結婚どころか恋愛そのものを嫌悪していた。セックスを知らない若者は日に日に増加した。一方、中年はセックスの快楽に溺れた。ある日、ミツキはログに誘われて「アカガミ」に志願した。それでミツキはサツキとカップリングされた。次第にセックスに没頭し妊娠したが出産した赤ちゃんは障害児だった。いまだにログが善意なのか悪意なのか全部分からない。近未来ならばすぐに妊娠中、障害児に気付くかと。私ならば絶対に志願しないかな。自然にパートナーを見付けたいし。ただし、面白かった。2019/04/05
fwhd8325
80
近未来というよりも、少し先の未来といった方がしっくりくるようです。もっとクールに描いているのではと勝手な先入観を持っていましたが、私は、この物語の根底に、暖かな血が流れているように感じました。新興宗教的な世界観は、国家が創りあげたものであり、これは、今の時代にも通じる、怪しい世界だと思います。タイトルは、そこを直接的に表現しているのだと思います。生命の尊さは、何ものにも代えがたいものであるはずなのに、無機質なものとして描くことで、血の温もりを感じるのです。2019/01/31