出版社内容情報
長篇推理第一作。舞台は首都圏で展開、紅駱駝氏とは何者か。あの『黒死館殺人事件』の原型とも言える傑作の初文庫化、驚愕のラスト!
小栗 虫太郎[オグリ ムシタロウ]
著・文・その他
内容説明
話は「シドッチの石」に始まる―それは何処に?警部は小岩井、探偵は尾形修平。からむのは紅殻駱駝!シャーロック・ホームズまで登場。舞台は東京、その近郊…。『黒死館殺人事件』の先駆をなす。著者短篇佳作に較べ「毫も敗けをとらぬ、自信が、私にはある」。洒脱にして通俗痛快。初文庫化!
著者等紹介
小栗虫太郎[オグリムシタロウ]
1901年、東京生まれ。推理小説作家、秘境冒険小説作家。京華中学校卒業後、会社員を経て印刷業を始めた後、小説をこころざす。「完全犯罪」が認められ、探偵小説文壇デビュー。雑誌『新青年』『オール讀物』『モダン日本』などに異色作・意欲作を発表した。1946年死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Bugsy Malone
74
『黒死館殺人事件』以前の作品で、初単行本化ということなので興味津々で。探偵は法水麟太郎では無かったけれど、性格はそっくりな様な。『黒死館』程の読みづらさ(それが『黒死館』の魅力でも有るのですが)は有りませんでした。謎の石を狙う怪盗との勝負、作中作にはホームズやイエスまで。その辺は小栗虫太郎さんという感じがむんむんでした。2019/07/09
ぶんぶん
18
【図書館】小栗虫太郎の小説を読んでみたいと書棚に手を伸ばす。 「黒死館殺人事件」の後に出版されたらしいが、執筆は遙か前のデビュー作に当たるらしい。 物語は探偵物でその当時の風景を活写している。 探偵役の尾形弁護士とワトスン役の小岩井警部、対する相手は「紅殻駱駝」この戦いが丁々発止と繰り広げられる。 ホームズが出てきたり、イエスが出てきたりと、奇想天外な物語。 ただ、トリックや動機など探偵役の気分次第で語られるので、解決を試みようとしても無理。小栗虫太郎の縦横無尽の世界が感じられる大正ロマンの探偵譚である。2021/11/08
ちぇけら
18
石というのは不思議な魅力がございます。しかも「シドッチの石」ともなれば争いも起こります。血だって流れます。催眠、夢遊だってお手の物。密室殺人?ええ、勿論起こります。何かを欲しいと思う気持ちは、其れがあると信じる気持ちから生まれるのですから。欲望だけが風化せずにいつまでも、醜いこと此の上ありません。「骰子を振って七という目が出たら、それは、失敗より、以上に悲惨な敗北なんだ」無惨にも、人が何人も死にました。紅殻駱駝の仮面が剥がれたとき、そこに残ったのは乾いて冷たすぎる冬の風ばかりです。遣りきれませんね。2019/07/06
hirayama46
5
はじめての小栗虫太郎。難解と評判の『黒死館殺人事件』のイメージが強かったのですが、本書はいかにも戦前の探偵小説らしいおおらかなところがあり、ゆったりとした気持ちで読むことができました。貴重なお宝を巡ってのお話なのも牧歌的で良いですね。もちろんそれなりにビターな味わいはありますが……。2024/01/11
Kotaro Nagai
5
本日読了。本作品は大正14年に書かれた著者の長編第1作とのこと。発表は昭和11年。尾形修平が名探偵、小岩井警部をワトソン役として、「シドッチの石」をめぐる殺人事件を追う。黒死館を先に読んでしまうと、どの小栗作品も読みやすく感じるのは常で、この作品も快調に読み進める。「そんなのあり?」的な展開や衒学的な説明はずっと大人しく、江戸時代に遡る伝奇的な要素も加味されて、小栗作品としては読みやすい伝奇ミステリーに仕上がっている。2018/10/14