出版社内容情報
時は室町。嘉吉の乱を発端に、南朝皇統の少年、赤松家の姫、活傀儡に異形ら、死者生者が入り乱れ織り成す傑作長篇伝奇小説、復活!
皆川 博子[ミナガワ ヒロコ]
著・文・その他
内容説明
時は動乱と呪法邪法に満ちた室町時代。赤松満祐が将軍義教を暗殺して挙兵し、満祐の側室野分がもう一人の側室玉琴を惨殺した夜から、死者生者入り乱れ運命が動き出す。南朝の血を引く少年阿麻丸は神器奪還の戦いに巻き込まれ、玉琴の怨念は活傀儡と化して野分と娘・桜姫に迫る!著者畢生の傑作伝奇小説。
著者等紹介
皆川博子[ミナガワヒロコ]
1930年、旧朝鮮京城市生まれ。73年「アルカディアの夏」で小説現代新人賞を受賞後、ミステリ、幻想小説、時代小説、歴史小説等、幅広いジャンルで創作を続ける。85年『壁 旅芝居殺人事件』で日本推理作家協会賞、86年『恋紅』で直木賞、90年『薔薇忌』で柴田錬三郎賞、98年『死の泉』で吉川英治文学賞、2012年『開かせていただき光栄です』で本格ミステリ大賞を受賞。13年にはその功績を認められ日本ミステリー文学大賞、15年文化功労者(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
geshi
29
皆川博子作品で桜で伝奇なのでハードル高くしすぎたかな。ドップリ感はそれほどではなく、とても読みやすい文章でスラスラいける。怪異をギリギリ現実にもありうる形で出しているため、やや外連味に欠ける印象。それでも下地としたフィクションの緯糸と史実のリアルの経糸を織り重ね、どこまでが現実でどこからが虚構か分からない一つの絢爛豪華な物語に仕立ててしまうのは流石。室町時代の動乱の中で生まれ流転する愛憎劇をエンターテインメントとして読ませる皆川作品らしいストーリーテリング。2018/03/09
まさ
26
応仁の乱へと向かう室町時代。ただでさえ猜疑と裏切りに満ちる混沌とした世界なのに、皆川さんは奇怪な傀儡など異形を盛り込んできた。赤松満祐の妾・野分とその娘桜姫、そこに玉琴、兵藤太、山吹、蝦蟇丸、阿麻丸、百合王…と幾重にも絡んでくる。妖しい世界観は耽美な世界にもつながる。登場人物同様、幻を見ているのか、不明瞭な世界に誘われた。 時折、"解説"が入るのは皆川さんが現実に引き戻してくれているのかな。下巻へ。2021/08/09
ゆう
12
男女貴賎問わずいかがわしい人物のオンパレードなので、最初胃もたれがして読み進まなかったが、中盤あたり(上巻の)から慣れてきたのか物語に引き込まれた。荒唐無稽とも言える展開なのに説得力を感じてしまうのは時代を室町に持ってきてるからか、筆力が凄いのか。期待しながら下巻へ…2020/03/22
真理そら
6
最近クローズアップされている応仁の乱の少し前の話。野分の女らしい執着や阿麻丸の鬱々とした虚無感が丁寧に描かれているので伝奇物風味は薄い。南北朝から応仁の乱あたりの歴史に弱いので作者に振り回されながら年表片手に上巻を読み終えた。2017/10/06
春の夕
5
無道な行為は人の貪汚さを際立たせ、瞋恚に燃える様に焦燥感を抱かされ、惆悵としてひとりその人を憶うことを止まない。醜くもしぶとくも生へ執着する姿には憧憬を食らわされ、薄幸な生を背負って生きている様は庇護欲を沸かせる。人は生死違わず美醜変わらず、ひとつひとつ知る限り、何かしかの感情を生じさせる力があり、その大きな力には畏怖するけれども目を奪われて仕様がなかった。2022/02/11