出版社内容情報
絶望的な愛憎、疾走する友情、予感が身体を満たすときわたしの家は消失し、そして優子は踊らない……とても特別な「関係」の物語。
青山 七恵[アオヤマ ナナエ]
1983年生まれ。2005年『窓の灯』で文藝賞を受賞しデビュー。07年『ひとり日和』で芥川賞、09年「かけら」で川端康成文学賞を受賞。著書に『わたしの彼氏』『快楽』『めぐり糸』『繭』他多数。
内容説明
緑地の平屋に住む姉妹・貴子と澄子が奏でるあまりにも純粋な愛憎(「風」)、ともに大手肌着メーカーに就職した十五年来の友人・実加と未紀が育んだ友情の果て(「二人の場合」)、身体の声に忠実に決して踊らない優子(「ダンス」)、そして旅行を終えて帰ってくると、わたしの家は消えていた…(「予感」)―疾走する「生」が紡ぎ出す、とてもとても特別な「関係」の物語。
著者等紹介
青山七恵[アオヤマナナエ]
1983年、埼玉県生まれ。2005年「窓の灯」で文藝賞を受賞しデビュー。07年『ひとり日和』で芥川賞、09年「かけら」(短篇集『かけら』収録)で川端康成文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ちょき
43
筆圧(文章から受ける迫力)の高い短編集。◇「予感」掌編。いつかこうなることは予想していた。って、旅行から帰ったら家がない主人公。あわてず実家に電話したら、それが生きてる証だという家族。なんたる筆圧の高さ◇「ダンス」小さい頃からダンスを踊らない女の半生。俺だっていいたい。「どうして踊らないの?」◇「二人の場合」割とめんどくさい女どうしの友情物語。だがしかし、読了後の余韻が深く染みる。◇「風」表題作。緑地の奥に住む老姉妹。この二人をどうにかしてあげて。それに真剣に読んだこの気持ちもどうにかして欲しい。!2017/04/29
ポテチ
24
表紙がお弁当の包みみたいで可愛い。短編集。決して踊らない優子の話と、女性あるあると、表題「風」。遠く引いて読むとなんとなくいいんだけど、近づくと少し物足りない。でも、他作品も読みたい。2019/08/07
エドワード
19
「風」は五十代の姉妹の物語。ある時、亡き父の残した緑地の平屋へ越して来る。若い頃はさぞ美しかったろう、でぶの姉と悪霊の妹。仲が良くても悪くても、老いては共に暮らすしか道はない。外国の童話のような不思議な世界観。「二人の場合」は現代の日本を生きる二人の女友達の物語。共通点は<大声で笑い、カワイイを連発する女が大嫌い>。しかし結婚して娘を持つ実加と、退社して気ままに暮らす未紀の心は徐々に離れていくが…くされ縁とはよく言ったものだ。「自分がつまらない人間であることを認めていく過程そのものが人生なのだ。」が至言。2018/04/24
nemuro
8
たぶん本書が2017年、最後の読了本。青山七恵の本は、そう多くはありませんが、何冊か読んでいて、独特の観察眼みたいなところが好きな作家。ですが、本書に関しては、ちょっと違った感じで、正直なところ、あまり理解できないままの作品もありました。そんな中、「二人の場合」が辛うじて、ふむふむ、そうかそうかと。2017/12/30
きくらげ
7
この作家の言葉には、近親者というズレて置かれた合わせ鏡のような存在への意識を少しほぐしてくれる優しさがある。近くなってしまった人間に対する心理的な引力や裏返って出た憎しみを描く中で、互いの心の棘も産毛もそっと掬い出してくれる気がする。 内的な強度で凝り固まった関係も、終わり方は何であれ、ものの移り変わりによってどこかへ吹きさらわれていってしまう、人生の通奏低音として響く風がある。その風に乗せた小説の言葉は、どこかから漏れ出てきて知らぬ間に自身の内面と照応関係を結んでいるような言葉なのだ。2023/08/13