出版社内容情報
ぼくの左目はまさしにどつかれて腫れていた。親友の神永たちは仕返しに向かったのだが……新芥川賞作家が描く最高の青春小説!
山下 澄人[ヤマシタ スミト]
1966年生まれ。神戸市出身。富良野塾二期生。劇団FICTIONを主宰。作・演出・出演を兼ねる。著作に『緑のさる』、『ギッちょん』がある。
内容説明
ぼくと神永、三上、長田はいつも一緒だ。ぼくがまさしにどつかれて左目を腫らしたと知ると、神永たちは仕返しにゲーセンに向かい、教師や先輩からの理不尽には暴力で反抗する毎日。ある晩、酔った親父の乱暴にカッとなった神永は、台所に二本あった包丁を握る。「お前にやられるなら本望や」そう言い放つ親父を、神永は刺すのだが…。痛みと苦味のなかで輝く少年たちの群像。
著者等紹介
山下澄人[ヤマシタスミト]
1966年、兵庫県生まれ。富良野塾2期生。96年より劇団FICTIONを主宰、作・演出・出演を兼ねる。2012年『緑のさる』で野間文芸新人賞、17年『しんせかい』で芥川賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
sin
81
ワルではないが、やんちゃな悪たれが語る事どもは、彼の視点や空想の垣根すら越えて、その友達それぞれの立場に成り代わったり、ましてや敵対するグループの誰それになったりするから、何だかとても浮遊感を感じてしまう。お祖母ちゃんが現れてからはそこに時制を越えて人生まで感じさせられてしまうからやっかいだ。人生の終焉を迎えてまるでフラッシュバックのように懐かしい場面が立ち返る。親しい人たちが現れる。消えて逝く…読み解くつもりがいつのまにか共感している自分がいた。2017/09/19
田氏
20
あー あれや 何やったっけ 客? 月の 「他のも読まなあかんとは思ててんけどな、あれ読んでから」「あれて」「割と最近出たほうのやつ」「ああ」 思い出した ぼくは『月の客』を読んだとき、ずいぶんな衝撃を受けたのだった。それは確かに書いてあったのだけど、読むことができなかった。ぼくはそれを読まないまま頭に入れた。それはわたしの頭によく入ってきて はうわうわー、はうわうわー なんか過ぎったな、いま 「だからして、これは死の世界からのことばなのです。なにもかも溶けた後」 飽きた もうやめよう2022/11/25
メセニ
13
表題作がとかく素晴らしい。最初は「不良中学生の話か苦手やな」ぐらいの印象だったけど、途中からどうにも様子がヘンテコなのだ。考えてみれば序盤から、語り手=ぼくは何故だか”神の視点”のようなものを持っていてこれは妙である。中盤からは語りの輪郭はたちまち失われ、視点も時系列も突然散らばり脳内を「?」が行き交う。物語って一から十まで全部わかるとつまらないわけで、理屈を超えた体験こそが醍醐味だとするなら、この小説は読み手を思わぬ境地に連れて行く。読む行為や体験そのものが快感だなあと。2017/05/25
ぽち
12
山下さんの作品が文庫で読めるようになったのであの件もよかったなあとおもえた。この作品を未購入だったのはパラパラしてみてだいぶ白かったからだ、短い会話文、改行改行、文字数が少ないと割高感を感じる、税抜き価格÷文字数、、、表題作は小説と戯曲の中間くらいの感じで、併録されている「鳥のらくご」はそれに散文詩の感じをあわせた感じ。表題作は中盤くらいから内田百閒の「花火」や「冥途」を思わせる。河岸を覗く。自己と他者を隔てる輪郭があいまいになる。2017/04/27
みほ
3
「Share」しません、「共感」もできません。 しかし、山下澄人の側にいて、海から、空から、彼岸から、壁のなかから語られる彼の言葉をずっと聴いていたいなあとおもう。 みんな可愛い子だった。会ってみたい。 町田康さんの解説がまた素晴らしい。2018/02/01