出版社内容情報
半世紀にわたりテレビドラマを発表し続けてきた名脚本家・山田太一が自らの仕事について自作について大いに語る。解説:宮藤官九郎。
内容説明
半世紀にわたる脚本家生活を送ってきた山田太一は、何を見、何を考え、どのような思いを込めて、テレビドラマを書き続けてきたのか。自らの仕事作法について、「岸辺のアルバム」「想い出づくり。」「ふぞいろの林檎たち」など数々の名作の誕生秘話について、大いに語る。語り下ろしインタビュー付き。
目次
1(日常をシナリオ化するということ;枝葉の魅力;映画からテレビへ;映画とテレビのあいだ;テレビ暮し ほか)
2 自作再見(女と刀;それぞれの秋;さくらの唄;岸辺のアルバム;男たちの旅路 ほか)
著者等紹介
山田太一[ヤマダタイチ]
1934年、東京浅草生まれ。早稲田大学卒業後、松竹大船撮影所入社。演出部で木下惠介監督の助監督に。65年、脚本家として独立、「岸辺のアルバム」「早春スケッチブック」「ふぞろいの林檎たち」など数多くの名作テレビドラマを手がける。88年、長編小説『異人たちとの夏』で山本周五郎賞、2014年、エッセイ集『月日の残像』で小林秀雄賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kaoru
73
テレビドラマの世界で不朽の名作群を描いた筆者。戦後日本の精神的空洞に向かい合った『岸辺のアルバム』など数々の作品は昭和の暮らしの記録としても貴重だ。ラフカディオ・ハーンを主人公に据えた『日本の面影』は失われゆく日本への鎮魂歌だろう。視聴率優先の現代のドラマが失った品格や人間への洞察力は文学と並ぶ力を持っていたように思う。常に問題意識を持ち、綿密な調査を重ねてシナリオを執筆した著者の新しい作品に触れることが出来ないのは寂しいが『異人たちとの夏』がイギリスでリメイクされるなど名作は国境を越えて伝わることを→2023/12/25
しげ
66
年末に訃報を知り手に取りました。昭和の映画黄金期からテレビ時代へと移り変わる頃、巨匠と呼ばれる監督や職人達の中で育った山田さんもテレビドラマ脚本家へと軸足を移します。銀幕関係者中心にテレビに対する偏見、嫉妬も有った事が語られています。現代では映画、テレビも地上波にBS、ネット配信とすっかり娯楽の多様化が当たり前となりました。「ふぞろいの林檎たち」は続編を含め全て観ましたがモデルとなった人物(後輩?)の存在には驚きました。心からご冥福をお祈りします。2024/01/28
おさむ
47
「私は少し自分が嫌いな人が好きである」「まったく人間なんて手に負えない代物で、1人ではいられないし、一緒に住めば縛り合う」「僕はスピードが速いということに抵抗感がある。わからない同士がポンポン会話したら間違いだらけになってしまう気がする」‥‥。山田さんのドラマが時が経っても色褪せないのは、一本筋が通っていて、目線が低いから。ふぞろいの林檎たちのモデルになった青年との交流談には心をうたれました。あれこれ語る作品の中には記憶に残っているものも多く、思わず再見したくなります。2017/02/02
ネギっ子gen
43
氏の小説も好きだが、出会いがテレビドラマだし「私記テレビドラマ50年」という副題に惹かれ、懐かしい想いで読み進めた。「時にはいっしょ」で、<私は少し自分が嫌いな人が好きである。あるがままの自分でなにが悪い?とひらき直ったような人は苦手で、自分の欠点を知っていて、なるべく隠そうと努め、出来たら“あるがまま”より少しは“まし”になりたいと考えているような人が、どちらかといえば好きである>と書いているが、このように控えめながらも、<苦いといえば苦い、淋しいといえば淋しい言葉>を茶の間に長く届け続けていたのか……2020/09/08
もりくに
32
山田太一さんのドラマが好きで、古いものも必ず観るが、少しも色あせないのがすごい。この本は彼のドラマ創りの考え方や、「自作再見」と銘打った「ふぞろいの林檎たち」などの自作ドラマの狙いなどからなる。彼は「家族」を描くことが多いが、崩壊している家族ではなく、「それぞれが自分を少しずつ抑え、曖昧なまま微笑を浮お家族」を描く。そのほうがはるかにリアリティーがあり、徹底性があると。また、「岸辺のアルバム」のラストで、堤防の決壊により家が流されることについて、必然性がないとの批判に、事故は突然起こるから事故だと。2018/08/20