出版社内容情報
吉村昭と歩んだ五十余年。人生の哀歓を分かち合った夫婦の歳月を描く感動のエッセイ。巻末に「自分らしく逝った夫・吉村昭」を収録。
【著者紹介】
1928年福井県生れ。学習院短期大学部卒。53年吉村昭と結婚。芥川賞、女流文学賞、芸術選奨文部大臣賞、川端康成文学賞、菊池寛賞を受賞。著書に『遍路みち』『紅梅』『夫婦の散歩道』『似ない者夫婦』等。
内容説明
夕暮れの公園、書斎の窓、旅の空。喜びと悲しみのはざまに、夫の姿が蘇る―。吉村昭と歩んだ五十余年の歳月、思い出の旅路、懐かしき人々。作家として妻として、人生の哀歓をたおやかに描き出す感動のエッセイ集。吉村司「母のウィンク」、巻末に「自分らしく逝った夫・吉村昭」を収録。
目次
1 夫婦の歳月(二人の散歩道;しあわせ教 ほか)
2 記憶の旅路(ひたむきな取材;異国文化の味 ほか)
3 思い出深き人々(大きな手―八木義徳;十七音の風景―鈴木真砂女 ほか)
4 愛すべき故郷(神と紙の祭を訪ねて;福井県に代って ほか)
5 家族とともに(戦艦ミズーリと、武蔵;越後のたより ほか)
著者等紹介
津村節子[ツムラセツコ]
1928年、福井県生まれ。学習院女子短期大学卒業。53年、吉村昭と結婚。65年「玩具」で芥川賞、90年『流星雨』で女流文学賞、98年『智恵子飛ぶ』で芸術選奨文部大臣賞、2011年「異郷」で川端康成文学賞を受賞。同年、菊池寛賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ふじさん
91
吉村昭のエッセイ集は何冊か読んだが、妻・津村節子のエッセイ集は初めて。彼女の視点で書かれた吉村昭の実像が見え隠れして面白かった。夫婦で歩いた夕暮れの公園、昭の書斎の窓から見える風景、二人で行った旅の空。語られる話に、夫・昭の姿が浮かび上がる。何とも言えない味わいのある文章が印象深い。夫・吉村昭と歩んだ五十余年の歳月、思い出の旅、懐かしい人々との思い出。作家として妻として、人生の哀歓を淡々と綴ったエッセイ集。彼女の人柄がにじみ出ている。吉村昭の代表作「戦艦武蔵」「ポーツマスの旗」のエピソードも読めた。2025/08/24
ぼちぼちいこか
28
タイトル通り夫の吉村昭氏との思い出が書かれている。作者が夫の死後、思い出すのが嫌で家を建て替えたこと、駅からの帰り道に夫が家の前で立って待っているなど、吉村氏の思い出がたくさん書かれていた。最後に長男の司氏の手記も載っていて、感慨深い一冊になっていた。2020/10/29
けぴ
28
芥川賞作家の津村節子さんですが、吉村昭さんの妻、という方が自分には興味がある。二人が若い頃は、吉村さんは紡績会社勤めをしており、その後、妻の津村さんが芥川賞を受賞したあとは、自分も頑張って小説を書く決意。時間の自由を得るため、会社を辞めて独立して紡績の仕事をするようになる。しかし思うように時間はとれず売れ残り商品を北海道や東北で行商していたエピソードは興味深かった。吉村昭ファンにとっては日常の生活を垣間見られる貴重な一冊。2018/11/11
あ げ こ
12
色濃く漂う気配。未だそこかしこにいると言う。互いの、夫婦の当然であった時間の中に、見慣れたいつもの場所に。自分もまた話し掛けると言う。かつてずっと、そうしていたように。それを慰めにするのではなく、自分自身の悲しみや感傷を認めるように。縋り付く事で自分自身を慰撫するのではなく、幻に過ぎぬと自分自身を正すように。それ故に重さを持つ悔恨。妻としてあるより、作家としてあり続けた事。しかしその後悔の中にこそ、津村節子と言う作家の強さがあるように思う。幻の甘さに逃げず、ずっと向き合っている。ずっと言葉にし続けている。2015/12/04
藍
11
夫・吉村昭との思い出が詰まったエッセイ集。 いなくなってしまった夫への、後悔と切ない愛情を感じる。作家同士の夫婦の距離感が面白かった。2017/04/29