出版社内容情報
古代日本人にとって、生誕は蛇から人への変身であり、死は人から蛇への変身だった……日本の神と蛇信仰の核心に迫る吉野民俗学入門。
【著者紹介】
1916年~2008年。東京生まれの民俗学者。女子学習院、津田塾大各卒。東京教育大学より文学博士の学位を授与。『扇』『蛇』『天皇の祭り』ほか著書多数。独創性の高い民俗学を確立し全12巻の全集も刊行。
内容説明
古代日本人は、木や山を蛇に見立てて神とした。そして、人の生誕は蛇から人への変身であり、死は人から蛇への変身であった…神道の底流をなす蛇信仰の核心へと迫り、日本の神イメージを一新。“吉野民俗学”への最良の入門書となる名著!
目次
第1章 日本人の蛇信仰
第2章 産屋―蛇から人へ
第3章 喪屋―人から蛇へ
第4章 箒神と荒神
第5章 他界と方位―出雲と伊勢
第6章 古代日本人の死生観
著者等紹介
吉野裕子[ヨシノヒロコ]
1916年~2008年。東京生まれの民俗学者。女子学習院、津田塾大各卒。東京教育大学より文学博士の学位を授与(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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nobi
53
きっぱりと言い切る潔い文体は、白川静の文体に似ている。先行する学説に捉われず徹底的に、虚心に古代人の心性に寄り添った者のみが見い出すことのできた説を述べているからだろうか。「従来の民俗学では考えられない斬新な」仮説ではあっても、だから不自然に感じられない。漢語的な表現の中に現れるひらがな的な嫋やかな表現も魅力的。「産屋」も「喪屋」もない現代の生活様式に生きている我々にも《現世に対する真の他界とは、日本人にとってそこは世界蛇のあるところ、生死の根源の存するところ》という死生観に思いを致す機会を与えてくれる。2015/03/21
崩紫サロメ
13
蛇を通して日本人の死生観を考える。というよりは、もともと蛇と日本の習俗の研究をしていた著者のところに「日本の死生観について書きませんか?」という依頼がきたらしい。「他界を領するものが神、その神が蛇」という結論が前書きに書かれており、本文はそれを裏付ける形となる。少々強引なところも多いが、脱皮する姿やまばたきしない目に崇高さを感じる、という解釈は面白い。2020/01/08
∃.狂茶党
10
檳榔に西方への意識を感じる。 日の神は東西を軸とする。 インドのナーガに連なる、海からの蛇の道。 蛇の神は広く世界にいることから、この話題は、人類にとって蛇とは何かに広がる。 日本では大蛇はたかが知れており、ヤマカガシあたりに過ぎないが、川の異名であったり、神話にはよく出てくる。 大河というほどのものは、島国にあるはずもない。 正直トンデモと見分けがつかない。 アマテラスは、蛇であり蛇の巫女。 神は蛇であり、蛇と交わるもの。 ミコトモチ、言霊は蛇であろうか。 二重螺旋はメッセージである。 2022/06/05
Honey
8
日本にこんなにも根付いていた蛇信仰。 古代史的民俗学的アプローチで、日本人の信じていた神の姿と人の誕生および死の意味を明らかにし、現代まで続いている習慣の原点を解き明かす、みたいな…そうだったの~、と大変興味深く読了。2020/09/10
大臣ぐサン
4
吉野裕子の手にかかればどんなものでも蛇と化す。日本人にとっては蛇は神そのもの。神事にかかわるあらゆるものが蛇である。男根は蛇であり、しめ縄は蛇の交尾である。女身は蛇身であり、出産された子供も蛇。産屋も蛇、鏡餅も蛇、扇も蛇、蛇蛇蛇。蛇は脱皮を繰り返し転生する。日本人の魂も蛇のごとく転生するのだ。2019/04/25
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