出版社内容情報
「一トンの塩」をともに舐めるうちにかけがえのない友人となった書物たち。当代無比の書評家でもあった須賀の、極上の読書日記。
【著者紹介】
1929年兵庫県生まれ。著書に『ミラノ 霧の風景』『コルシア書店の仲間たち』『ヴェネツィアの宿』『トリエステの坂道』『ユルスナールの靴』『須賀敦子全集(全8巻・別巻1)』など。1998年没。
内容説明
本を読むことは生きることと同じ。優れた書評家でもあった須賀の書物と作家をめぐる極上のエッセイ集
目次
1(ユルスナールの小さな白い家;翠さんの本;一葉の辛抱 ほか)
2(小説のなかの家族;作品のなかの「ものがたり」と「小説」―谷崎潤一郎『細雪』)
3(『翻訳史のプロムナード』辻由美;『イタリア紀行』ゲーテ;『ニューヨーク散歩―街道をゆく39』司馬遼太郎 ほか)
著者等紹介
須賀敦子[スガアツコ]
1929‐98年。兵庫県生まれ。聖心女子大学卒業。上智大学比較文化学部教授。1991年、『ミラノ霧の風景』で女流文学賞、講談社エッセイ賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はっせー
135
初めての須賀さんの本。須賀さんの文章は優しく美しい!まるで太陽のような文章だった。タイトルにある塩一トンの話は、イタリア人の姑に言われた言葉である。塩一トンはとても舐め尽くすのに時間がかかる。そのぐらい時間をかけて人と接しないといけないということわざ。それを須賀さんがアレンジして、古典や名著は塩一トン舐め尽くすぐらい時間をかけて読むといろんな発見がある。この考えに基づいて、色んな本の感想をまとめている。ここで書かれた谷崎潤一郎さんの細雪を源氏物語を絡めて感想を書いていて、細雪も読みたくなったのである!2021/11/07
シナモン
131
上質な言葉で綴られる奥深い本の世界に背すじがしゃんとする思いでした。あれもこれも知らない本ばかりで恥ずかしくなりますが、その分これから先の読書の楽しみは増えました。「細雪」の分析が興味深いです。ぜひ読んでみなくては。塩一トンを舐める気持ちでいろんな本を味わいたい。2023/04/20
ユメ
83
「ひとりの人を理解するまでには、すくなくとも、一トンの塩をいっしょに舐めなければだめなのよ」イタリア人の姑から贈られた喩えを、著者は書物を読むという文脈において引用する。苦労する、という意味での「塩を舐める」という行為が「一トン」にも及ぶ。私の読書はその遥か手前だ。千冊のあらすじを語れるより、百冊を深く読みこむ方が読書人生を豊かにしてくれると忘れずにいたい。須賀さんの格調高い文章を読んでいるだけで心が満たされてくるが、ここに留まって、論じられた本を知った気になっていてはだめだ。自分できちんと塩を舐めねば。2015/04/28
Kajitt22
71
暮れから新年にかけて、ゆっくりだけど久しぶりに須賀敦子さんの本を読み、気持ちが静かになった。1990年台はじめ頃だったか、ふと手に取った『ミラノ霧の風景』の端正で喪失感の濃い文章に魅せられて、それから数年須賀さんのエッセイが刊行されるを心待ちに読んだ記憶がある。ここ何年か、その当時のエッセイに出てくる作家「タブッキ」や「ユルスナール」の著作に出会い魅了されている。この晩年のエッセイも書評や作家評があり、いつかその本たちとも出会えるのを楽しみにしている。2021/01/05
aika
67
本を開いて、プロローグの冒頭に触れた瞬間から、須賀敦子さんの世界にすっと包み込まれるような、体温のあるこの不思議な感覚が大好きです。一トンの塩を舐めるように、じっくりと時間をかけて対峙するように読書、特に古典を読むことへの覚悟が伝わってきます。多くが知らない作品の書評でしたが、イタリア古典から一葉や『細雪』などの日本文学、気鋭の中国文学にまで及ぶ範囲の広さには感嘆です。その全てに、須賀さんご自身の生活や来し方から滲むような、苦境にあったり、蔑まれている人への優しい眼差しに、温かく真摯な気持ちになります。2018/11/03