出版社内容情報
黄昏ゆくハプスブルク家の復興を目指した、若き皇帝。しかし、彼の征く道には、周辺国との戦争と、数々の悲劇が待ち受けていた。
【著者紹介】
1941ー2005年。元東洋大学教授。著書に『ハプスブルク家』『ハプスブルク家の女たち』『マリア・テレジア』『カール五世』『ハプスブルク夜話』などがある。
内容説明
もはやハプスブルク家の光も消えかけようとした一九世紀後半、「一致団結して」をスローガンに、ひとりの皇帝が現れた。その後、六八年の長きに渡って帝位を守り続け、王家の復活を夢見続けたその男、フランツ・ヨーゼフ―しかし、運命の輪は彼を翻弄し、次々と悲劇に襲われる。帝都ウィーンの光と影とともに、ハプスブルク家の落日を描いた本邦初の傑作評伝。
目次
第1部 若き皇帝(三月革命;絶対主義への回帰 ほか)
第2部 オーストリア=ハンガリー帝国(「アウスグライヒ(和協)」の成立
アウスグライヒ以後 ほか)
第3部 ふたつの訃報(ドイツ、イタリアとの三国同盟;三帝会議(一八八四‐八五年) ほか)
第4部 晩年のフランツ・ヨーゼフ(フランツ・フェルディナントの結婚問題;帝都ウィーンの繁栄 ほか)
著者等紹介
江村洋[エムラヒロシ]
1941年、東京生まれ。1970年、東京大学大学院比較文学比較文化博士課程修了。元東洋大学教授。ヨーロッパ文化史、特にハプスブルク家を研究。2005年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ぱなま(さなぎ)
17
永らえるというのは近しい人を見送り続けるということでもあるのだった。バラバラになった家族、錆びついた宮廷、そして不安定な多民族国家を抱え、18歳で即位してから86歳で亡くなる直前まで、早寝早起きして一日十時間もの公務を死の直前まで続けていたという生涯には驚嘆するほかない。沈没しかかった大船は、彼の逝去と同時に大事な楔が抜けたように音を立てて崩れ去った。自分が他の誰とも替わることのできない、かけがえのない人物だという自覚は、精神と肉体を支えるものなのかもしれない。2018/06/06
さすらいの雑魚
14
ハプスブルグ王朝の最後の70年を治めた皇帝の伝記。神聖ローマ帝国の残香薫る古い帝位を継ぎ、四方の列強と対峙し国民国家の時代に衰亡する帝国の対立抗争する諸族を統治するという無理難題に挑んだ男の美しい敗北の物語。惚れて嫁にした皇后エリザベートは放浪→暗殺。弟は野心に燃えメキシコ皇帝→処刑。嫡男は自殺。病み疲れた老帝の祈り言が「我は見捨てられし者なり。最後の息の絶えるまで戦う者なり。名誉のうちに滅びゆく者なり」とか。孤愁深すぎでもはや帝冠と言う名の呪い。だが彼の不屈の歩みは伝説だ。遠い日本でボクは感動してる。
高梨
3
さすがに難しくて、読破にすごく時間がかかった。笑 でも、妻が旅先で暗殺、息子は情死、甥夫妻も暗殺という正直気の狂いそうな運命を86歳まで生き抜いて、あとがきにあるとおり「もしこの皇帝が存在しなければ、(中略)国家はがらがらと音を立てて瓦解する」ほどの人物であったことが改めてすごいと思う。2020/01/04
なあちゃん
3
フランツ・ヨーゼフはエリザベート妃の夫としてのイメージがあるが、皇帝として、どこまでも真摯に帝国の運営にあたったことに頭が下がる思いがする。 家庭的には恵まれないのも、気の毒に感じる。2014/05/05
kentake
3
19世紀後半のオーストリアの歴史が、皇帝フランツ・ヨーゼフを主人公とする大河ドラマのような展開で描かれており、大変面白い。各地で民族意識が高まる中、多民族国家としてのオーストリアの結束力の維持と、政略に長けた周辺列強との駆け引きを同時並行で進めなければならない皇帝の苦悩が、伝わってくるようだ。2014/03/08