内容説明
おとこ前な男女の、内外の数奇譚。幕末物、西洋実話物語、戦後風俗、女の意地…。
目次
国風
レカミエー夫人―或は、女の職業
カストリ侯実録
淪落の皇女の覚書
あめりか物語
妖婦アリス芸談
或る兵卒の手帳
大赦請願
著者等紹介
久生十蘭[ヒサオジュウラン]
1902年、北海道函館生まれ。作家。函館新聞社に入社後、上京、岸田国士に師事。渡仏し、演劇論を学ぶ。帰国後、『悲劇喜劇』の編集に従事、演出も手がける。『新青年』などで言語実験を駆使した推理小説、伝奇小説、珠玉の短編群を発表。1957年死去。主な作品に、「鈴木主水」(直木賞)、「母子像」(国際短編小説コンクール1位)などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
sin
34
          
            『あめりか物語』のエゴイズムは某文豪のこころよりよほど人間観察が出来ていて女々しさのかけらもない本物の自己中を描き出す。創作以外の史実に基づいた作品はいずれも人間の残酷さを描いて空恐ろしい、人は人に対してこんなにも残酷になるのだから最近ニュースになった自分探しの為の戦争参加など、とんでもない甘ったれなことだと思わずにはいられない。2014/10/09
          
        misui
8
          
            歴史と風俗に取材した短篇集。ペダントリーに満ちた硬質な文体が快い。初めて十蘭を読んだがこれだけ巧ければ何を読んでもはずれはない気がする。「カストリ侯実録」「淪落の皇女の覚書」がお気に入り。2013/01/26
          
        ふるい
5
          
            この巻は歴史実録物が多いようで、それらもよかったのだがやはり「あめりか物語」は占領下の日本を舞台に人間ドラマが繰り広げられていて面白かった。「レカミエー夫人」はコメディタッチで描かれる女性たちのやり取りが楽しい。「淪落の皇女の覚書」は、十蘭も"実は生きていたロマノフ家"ものを書いていたのは嬉しい発見でした。2017/03/31
          
        mugi
4
          
            頭から順に読んで『国風』の渋さに唸っていると突然職業婦人の女子会みたいな話になってお嬢さん方のやりとりが滅茶苦茶可愛いし、やっぱり血みどろの軍記もの・歴史ものは外せないし。話の種は無尽蔵。そこをそう切り取るのかと驚かされる。軍記ものもいいのだが硬質かつ「ちゃんと」描写してあるので若干流し読みになってしまう…『あめりか物語』がドラマチックで面白かったからこういうタイプの作品ももう少し読んでみたいな。次の短編集へ。2015/02/28
          
        ovonkovon
3
          
            あいかわらずのクールで洗練された筆致である。だからこそ、似た話が続くと結構キツイ。ルイ17世の話の後のアナスタシアの話なぞ、非道の描写が容赦なさすぎて本当につらい。冒頭の「国風」がとても国粋主義っぽい話だなあと発表年をみたら、WW2真っ最中で、ああ...と思った。命は使うものとする十蘭の美学は、戦時中の国風によく合っていたのだろう。気になって戦後の作品歴を見てみると、意味も甲斐もなく淡々と人々が死んでいく描写のあるものが散見され、従軍記者であった十蘭の見たものを邪推してしまった。2017/02/18
          
        


 
               
               
               
              


