内容説明
海生は、23歳の新米の坊主。初めてお勤めをすることになった通夜の最中、棺の上に突然、裸足の女性が現れる。遺影と同じ顔をした彼女は、なんと死んだはずの女子大生だった。自分以外、誰の目にも見えない彼女を放っておけず、海生は寺での同居を提案する。だが次第に、彼女に心惹かれて…若い僧侶の成長を描く感動作。
著者等紹介
白岩玄[シライワゲン]
1983年、京都市生まれ。2004年『野ブタ。をプロデュース』で第41回文藝賞を受賞し、デビュー。05年、同作は芥川賞候補作になり、またテレビドラマ化され、70万部のベストセラーとなった(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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きーしゃん
3
図書館の本は読了。読みながら思ったのは、主人公に彼女がいなくてよかったなと。いたならば更に苦しく己も相手も大変な修羅場だったでしょう。主人公は自己完結で、それを表現するかのように物語も自己完結。できれば、相手の立場での展開を描いて欲しかった。主人公の思いやりに託す形で触れてはいるが、想像を絶するほどにもっともっと深く重たいものを背負っているはずなのだ。それを読み手に投げるには主人公は精神的に幼い。現時点での優しさは学べたかも知れないが、本当の優しさは何も学べていない。相手に自己が打ちのめされていないから。2018/11/23
きよきよ
2
お坊さん見習いの内気な青年が祖父について行ったお通夜で、棺にいるはずの少女が生きているように語りかけ、動いたりしている。 主人公にしか彼女の声や姿は分からず、結局自分の部屋に居候させることに。物が触れない彼女にいろいろと気を使って暮らす。いつしか、淡い感情を抱くようになる。 あまり、展開はないがのほほんとした空気と珍しいあらすじ、暗くなりそうなトピックを爽やかに描いているので、それなりにおもしろかった。2013/10/23
Cidenon/土曜朝10時読書配信
2
『野ブタ。をプロデュース』の作者が描く恋愛小説。 海生と、海生にしか見ることができない幽霊の碕沢さんとの交流。 二人だけの時間はゆったりしていていい。 しかし、碕沢さんの内面があまり見えてこない。 海生も、彼女との出会いによる内面の変化が見られない。 碕沢さんは一度死んでいるから、彼女との別れは二度目の死ともいえる。 死というのは突然訪れるものだから、ラストにも納得はできる。 でもできれば、もう一度だけ海生と会って別れを告げることはできなかったかなあと思わずにはいられない。2017/06/18
つくし
0
切ない、ってこういうことなんじゃないだろうか、と思わせる小説でした。何をしてあげたいのか、それは本当にしてほしいことなのか。どうしたって近付ききれない違いがある。渇いていながらも温もりを感じるような印象でした。
武隈
0
死んだばかりの若い女性が、法要をした若い僧侶の前に現れる。相手は幽霊だが恋心を抱くが、距離感が縮まらず、切なくちょっと悲しく、そして静かに終わります。胸がツンとなる読後感でした。2015/04/30