内容説明
十蘭の前に十蘭なく、十蘭の後に十蘭なし。破天荒へ向けての完璧な計算、予想を裏切り期待を裏切らないウルトラC。最高の達成度を示す異色の傑作群。「胃下垂症と鯨」「モンテカルロの下着」「ブゥレ=シャノアヌ事件」「フランス感れたり」「心理の谷」「三界万霊塔」「花賊魚」「亜墨利加討」の圧巻八篇。
著者等紹介
久生十蘭[ヒサオジュウラン]
1902年、北海道函館生まれ。作家。函館新聞社に入社後、上京、岸田国士に師事。渡仏し、演劇論を学ぶ。帰国後、『悲劇喜劇』の編集に従事、演出も手がける。『新青年』などで言語実験を駆使した推理小説、伝奇小説、珠玉の短編群を発表。1957年死去。主な作品に、「鈴木主水」(直木賞)、「母子像」(国際短編小説コンクール1位)などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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sin
38
歴史のなかに埋もれてしまった個人、忘れられた出来事が文章のなかに蘇る。それとは別に興味深いのはパリ陥落を受けて軽井沢で苦闘するベロォさん自業自得でセコイいたずらにしっぺ返しされるが最後まで矜持は忘れない。他の物語にみられる感銘こそないがこれも歴史に埋もれた個人と言えるのだろう。2014/10/27
鷺@みんさー
26
十蘭はキッチュで猥雑でキュートで頑固で愛おしい。巴里で鰯のお嬢さんたちも、大陸風の妖精礼奴も、愛国一徹ツンツンツンデレなベロォさんも、いとしきかな。2022/02/14
ゆうほ
13
面白い話とよくわからない話があり…。モンテカルロの下着、フランス感れたりは大変良かった。他の作品も読んでみるか。2019/03/20
ふくしんづけ
12
〈ベロォさんはどこにでもいる! とんと軽井沢にベロォさんが氾濫しているといったぐあいだった。〉これは何回も頭のなかで唱えたくなり、すぐに暗記してしまった文章。これだけでも読んだ価値があったと言ってもいい。この「フランス感れたり」は、ユーモアと共に風刺も効いていて、万人受けする短編ではないだろうか。最後の三編はとっつきにくさがあるも、徐々に入りこめる。「花賊魚」ダイナミックな場面の連続な冒険譚。それを淡々と描き切り、ひとりの老婦人に着地する、〈真実の産みの母親だったように思われ〉とまで。2022/11/07
ヴェネツィア
10
帯に澁澤龍彦絶賛とあり、またタイトルにも魅かれて、かなり大きな期待を持って読み始めたのだが…。どうも作者のレトリックが私には波長が合わず、十蘭の世界にうまく入り込めなかった。2012/03/03