内容説明
巨大災害に直面した『日本沈没』の作者は、この私たちの体験を風化させないためにという祈りを込め、責任感に突き動かされるように、その全貌の記録と総合的な解析を一年間にわたり精力的に行った。阪神・淡路大震災の歴史的ルポにして、未来への警鐘を鳴らす名著。単行本未収録「阪神大震災の日 わが覚書」他を巻末に収録。
目次
はじめに(あの日から七十五日;災害列島に住む私たち ほか)
第1章 一九九五年一月十七日午前五時四十六分五十二秒(混乱から年が変わった一九九五年;たった十秒間のできごと ほか)
第2章 全貌を把握するために(あの日から半年;心細い気象台の観測網 ほか)
第3章 再生に向かって(都市文化の蓄積が復興に;対談 こころのケア(精神病理学者・野田正彰) ほか)
第4章 二十一世紀の防災思想へ(対談 観測(京都大学教授・土岐憲三)
謎深かった中途階挫屈 ほか)
著者等紹介
小松左京[コマツサキョウ]
1931年、大阪生まれ。京都大学イタリア文学卒業。日本を代表するSF作家。『日本沈没』は400万部を超える大ベストセラーに。同作で日本推理作家協会賞および星雲賞日本長編部門受賞。『首都消失』で日本SF大賞受賞。2011年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ぜんこう
16
1995年4月から1年間、毎日新聞に連載された阪神・淡路大震災のルポ。 やっぱり小松左京さんはいい意味化け物です。こんないろんな学術的に中味の濃いものを書けるって、いくら「日本沈没」執筆時に地震関係のことを調べたからって。 でも、このルポ、そしてこの震災が以降に生かされているんだろうか? 「地方のシリアスな問題に対してお上はあまり頼りにならない」と書かれてる状況は全く変わってないように思います。2015/08/19
モリータ
9
◆初出は毎日新聞95年4月~96年3月の連載、単行本は96年6月毎日新聞社刊、文庫版(本書)は2012年2月河出書房刊。◆マクロな視点でのルポ集。初回で、阪神大震災の多面的な全貌をとらえ、当事者としての心がまえを形成することを提案すること、「二十一世紀の防災思想」という方向まで視野に入れたものであることを示す。以下のテーマを提示;自然科学的特徴/行政、公共システムと社会的公共インフラの対応マニュアルと実際の対応//建築/被災地市民の生活防衛と復興/(企業の被災と対応/報道、通信/その他。(以上、34頁)2023/01/08
hideiz
4
ちょっと読んでみたくて手に取ったものの、ぎっしり詰まった内容と分量にめげて飛ばし読み。大事なことが書いてあるのでちゃんと読みたい。しかし集中力が足りなくて読みきれない。少しずつ読み直すことにする。2021/04/16
もくもく
4
95年1月に発生した阪神淡路大震災を箕面市の自宅で体験した著者が、同年の4月から新聞の連載したルポです。その筆は被害程度の把握から、自治体・自衛隊・医療・流通・メディアなどさまざまな分野の対応の記録、そして地質学・地球物理学研究から、耐震・制振研究と建設の実情、非常時の法整備まで、巨人・小松左京の面目躍如で幅広い分野に言及されています。海溝型の東日本大震災と比較すれば、直下型地震の特徴も興味深く、どちらの地震も起こり得る災害列島に住む者としては必読の記録だと思います。2012/03/14
長老みさわ/dutch
4
当事者として被災した「日本沈没」の著者が、地震直後から翌年の4月まで、誰が何を出来て何が出来なかったのか、そしてこれからも確実に来る巨大地震や災害に対してどのような準備が必要かを丁寧にレポート。 2011年の東日本地震について、これほど丁寧なレポートを書くことが出来る人がいるだろうか。是非これに匹敵する仕事を誰かにやってもらわなくては。 そして、16年前に指摘された事が、16年後に解決できていたのか、そのままだったのか、それらをきちんと検証すべきだろう。 2012/02/26