内容説明
一九五〇年代のパリ―戦後の芸術文化が華やかに咲き誇った街で、日本人歌手としてモンマルトルのキャバレー“ナチュリスト”の主役をつとめた著者による自伝的エッセイ。楽屋生活の悲喜こもごもや、まだ下町らしさの残るパリでの暮らしを、女性ならではの細やかな筆致で生き生きと描く。
目次
女の部屋
舞台裏の女たち
わたしの“巴里祭”
嘆きのリュシェンヌ
“ナチュリスト”の客席
パリで一番のお尻
シャンソンの街
憧れのダミア
ニースの一夜
パリジェンヌの素顔〔ほか〕
著者等紹介
石井好子[イシイヨシコ]
1922年、東京生まれ。米国留学を経てフランスに渡り、51年、パリでシャンソン歌手としてデビュー。世界各国の舞台に出演し、帰国後は歌手、エッセイストとして活躍した。2010年、逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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こばまり
56
唸るほどいいとこのお嬢さんでしかもアーティストとして華々しいキャリアを築きながらも、石井さんの文章は常に凛とした寂しさを纏っている。堪らなく好きだ。2016/09/19
morinokazedayori
42
★★★★著者はシャンソン歌手。パリのミュージック・ホール≪ナチュリスト≫でアルティストとして勤めた1年間の日々の暮らしぶりが綴られている。歌の勉強に励み、毎晩四公演もの舞台をこなす奮闘ぶりや、ミュージック・ホールの踊り子やマヌカンたちとの舞台裏など、華やかな舞台の光と影を、上品かつ小粋な言葉で穏やかに語る。パリの風に吹かれたかのような読後感。2016/09/27
meg
38
石井好子はどんなひとの巴里エッセイよりも好きだ。のんびりと紅茶でも飲みながら読み返したい。(初読は夢中で一気に読んだ)2024/07/16
ミス レイン
9
描かれるのは、お洒落でシックなパリではなく生活するホームとしてのパリ。レヴュで歌う歌手として過ごした楽屋でのエピソードが多いからか著者も含めて同じ舞台に立つ人々の日々の悲喜交々と一緒にそれぞれの生活や人生が交錯している。この時代の外国で歌と言う身ひとつの芸を外国人に認められて生きた著者はあらためてすごい人なのだと思う。オムレツの本はにぎやかだけどこちらはずっと落ち着いて哀しさや辛さや疲れや不安も見える。同じ時期の暮らしの中にあったオムレツと楽屋裏。人生はおもしろいものだと思えた。2014/10/16
どんぐり
9
1953年、パリのミュージックホール「ナチュラリスト」でアルティストとして出演していた日本人女性でシャンソン歌手の石井好子氏。当時、パリではジュリエット・グレコやエディット・ピアフ、イブ・モンタンらが活躍していた。日本人がミュージックホールで歌うなんてことは、実力がないと大変だったろうなと思われる。この本には踊り子やマヌカン、女給で溢れるミュージックホールの舞台裏、店を訪れる映画俳優や日本人のことも書かれており、戦後間もない時期に日本人がみた巴里の貴重な記録にもなっている。2012/10/10