内容説明
「彼は憎しみでも怒りでも何でもいい、身体に満ちることを願った。…大きなハードルも小さなハードルも、次々と乗り越えてみせる」危機をひたむきに乗り越えようとする主人公と家族を描く表題作をはじめ八〇年代に書き継がれた「秀雄もの」と呼ばれる私小説的連作を中心に編まれた没後の作品集。最後まで生の輝きを求めつづけた作家・佐藤泰志の核心と魅力をあざやかにしめす。
著者等紹介
佐藤泰志[サトウヤスシ]
1949年北海道・函館生まれ。國學院大學哲学科卒。高校時代より小説を書き始める。81年「きみの鳥はうたえる」で芥川賞候補となり、以降三度、同賞候補に。89年『そこのみにて光輝く』で三島賞候補となる。90年自ら死を選ぶ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アキ
101
映画「夜、鳥たちが啼く」を鑑賞し、原作の短編を読んだが、佐藤泰志の小説は味わいがある。「そこのみにて光輝く」にも共通する人間の暴力への衝動と男女間の性愛。生きることへのやるせなさを酒でまぎらわす男と、浮気をする男に愛想をつかし子どもを連れて飛び出した女の別居のような同居生活。不眠症の鳥たちが夜中にけたたましい鳴き声で啼く不穏さを背景に、この世間ではどんなことが起ころうとも不思議ではない男と女の関係を描く。「そうだね。でもそう考えただけで素晴らしいじゃないか」という小説の一節は繰り返され解釈は立場毎に違う。2022/12/21
いたろう
63
この中に納められた「夜、鳥たちが啼く」が映画化され、公開されるということで、手に取った。佐藤泰志の本は、繰り返し何度も読んでいるものがある一方で、死の翌年に発行されたこの短編集は未読だった。佐藤泰志の小説は、過去に5回映画化され、原作では函館が舞台でないものも、すべて函館を舞台に映画化されたが、今回の映画の舞台は函館ではないよう。ただ、この短編を2時間の映画にするのは無理があるのでは?と思ったが、配役を見ると、この本の他の短編「鬼ヶ島」の登場人物の名前も。もしかすると、その話の要素も入れて映画化している?2022/11/29
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49
🌟🌟🌟☆☆。中篇&短篇2本組。映画『夜、鳥たちが啼く』の原作収録。映画鑑賞した後、読了。佐藤泰志のこういうカンジの中篇作品を読んだ事がなかったので途中まで中篇だと気づかずに読んでいた。佐藤泰志の特に女性の描写が生々しくて(特に葡萄とプラムを文子が食べる箇所)凄く好き。陽子の描写も素晴らしくとてもかわいかった。油絵の厚塗りを彷彿とさせる日本絵画を鑑賞している気分になれる。『鬼ガ島』が話としては一番良かったかな。でも、(俺の中で佐藤泰志スイッチが入らなかった為か)全体的にはあまりときめかなかった。2023/01/15
ω
37
佐藤泰志かなり読み尽くしてきた…。さみしー。 今回の作品集も、男と女、時々子供ってな感じで、「ねッ切ないでしょ〜」って設定が多し。前半の秀雄モノはどれもいいし、夜、鳥たちが啼くはラストが好き。2024/10/13
メタボン
31
☆☆☆☆ 濃密で熱い文体にぐらぐらと揺すぶられる。秀雄と光恵の連作5編、「鬼ガ島」、「夜、鳥たちが啼く」、どの作品をとっても、いわゆる普通の男女関係ではないが、子供が仲介することにより、何故か不自然さを感じさせない。感情の暗い流れの表現が多いが、最後には明るい希望のようなものを感じさせる。佐藤泰志の作品が立て続けに映画化されており、再評価が高まっているのはうれしい。2016/08/26
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