内容説明
幼い頃、教会の日曜学校で仲良くなったみつると栄ちゃん。女学校に進学したみつると対照的に、父の病気のせいで芸者になった栄ちゃんを襲う悲しい運命…(『天国と舞妓』)。貧富の差など社会の流れの中で引き裂かれゆく少女たちを描く、「少女の友」黄金期に『花物語』の続編として連載された少女小説の傑作集。
著者等紹介
吉屋信子[ヨシヤノブコ]
1896年、新潟市生まれ。10代~20代にかけて発表した『花物語』が「女学生のバイブル」と呼ばれる程の大ベストセラーとなる。その後『安宅家の人々』『徳川の夫人たち』『自伝的女流文壇史』など多数の作品を発表、流行作家として人気を博した。52年、「鬼火」で女流文学賞、67年、菊池寛賞受賞。73年、逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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優希
46
貧富の差などで社会の中で引き裂かれていく少女たちに痛みが走りました。ただ、時代が大正から昭和にかけての物語なので悲惨な感じはなく、意外と平和な話が多いなと思いました。少女たちの別れを通じて成長を描いている、そんな印象です。生まれ育った環境で価値観も異なる様子は時に悲しみを生みますが、切々と生きている様子はただ愛おしいばかりです。可憐で清楚な話が多いですが、ハッピーエンドではないのが微妙なリアルさを感じさせて痛みが貫きました。2014/10/07
いりあ
21
吉屋信子が1935年に発表した少女小説短編集です。雑誌「少女の友」に『花物語』の続編として連載されたものをまとめたものです。どのお話も貧富の差などによって引き裂かれる少女たちを描いています。本書の特徴としては、社会的に強者の立場にいる女の子が主役になっている所にあると思います。「天国と舞妓」「素直な心のひと」「たまの話」などハッピーエンドではない作品が多いですが、この経験から大人の階段を登って行くのかなと想像したりしています。そんな中で、「田舎の親類」「小さい父さん」などは読むとほっこりします。2015/11/16
miroku
19
「たまの話」のみ読了。‟たま”と言っても猫じゃない。女中のたまとハーフのお嬢様の少女小説。2018/04/21
辛口カレーうどん
13
少女文学の背徳感や耽美な空気は少なく、教訓めいたお話が多い。お金持ちで美しい少女が、貧乏でみすぼらしい少女をとことん見下す。その後心を入れ替え、優しい少女になる…の繰り返しで、全てのお話が同じ展開でマンネリは否めない。しかし心を入れ替えるからこそ、嫌な読後感にならないのはいい。少女の残酷さ、ませた所はいつの時代も同じ。2016/10/06
混沌工房
8
昭和初期の少女小説とあるので、裕福なお嬢様と貧乏な少女が、立場を超えて分かりあい、最後は涙ながらに手を取り合い…てな展開と思いきや。予想に反し、かなりシビアな内容が多かった。『田舎の親類』はほっこりしていてよかったかな。ラスト『女の子』の、学校をさぼるという行為に憧れ、実際さぼってみたものの…という感覚はなんとなく分かるかも。レトロだけど、今読んでも楽しめ、共感でき、考えさせられる話ばかりだと思う。2013/08/31