内容説明
アブサン、時々そっと降りて来て、俺と遊んでくれていいんだぜ…。書庫に漂うアブサンの匂い。外猫のアダチやステテコとの、微妙な交流。愛猫アブサンの死から五年、アブサンが残してくれた贅沢な余韻を、あらたなエピソードで綴る感動の書き下ろしエッセイ。大ベストセラー“アブサン”シリーズ第三弾。
目次
アブサンの置土産
アダチの物語
アブサンの通り路
逢魔が辻
鈴の音
ステテコの気分
アブサンの夢
残り香
アブサンの贈り物
あみだくじ〔ほか〕
著者等紹介
村松友視[ムラマツトモミ]
1940年、東京生まれ。慶応大学文学部哲学科卒業。82年『時代屋の女房』で直木賞、97年『鎌倉のおばさん』で泉鏡花文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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まーちゃん
1
アブサン物語の続編。筆者の愛猫アブサンが亡くなって5年がたつなかで、アブサンがいない日々の日常と、つきぬ思い出を綴るエッセイ。元猫飼いとしては、タイトルの意味が分かりすぎてつらい。著者は、あえて猫とは関係ないお話もゆるゆるとはさんでくれているのだろうけど、その分だけこちらの気分の緩急がついてしまう。つい油断して読んでいると、時々息が止まるほど切なくなる。わが愛猫との日々がことごとくオーバーラップする。猫たちの飼い主への置き土産は何年経ってもなくならない。村松氏と同じく、私もあれから一度も猫は飼っていない。2025/01/26
きりん
1
本書によると奥様はアブサンの死後、アブサンの物語を全く読めていない、とのこと。その理由、凄くよく分かります。思い出が甦って来るのと同時に、ご自身の中や見方にはなかったアブサンがきっと作品の中にはたくさんいて、またそこから思うことがたくさん出て来そうで、そうなると涙も止まらなくなる訳で……。アブサンはもちろんですが、アダチの話も私には結構きました。私ならきっと、家に入れちゃう。そして家の子にしちゃう。隣人からの手紙には流れる涙を止めることができず。直前の第十三話でも泣きまくり、電車内で不審人物と化しました。2018/11/24
わかめ
0
何度も繰り返されるエピソード、時がたつほどに醸成される思い出の数々。村松さんにとって唯一無二の存在、人生の伴侶アブサンへの愛情があふれていて温かな気持ちになります。エサをもらいにやってくる野良猫たちのことも書かれてあって、アダチと名付けてひそかに愛でていた野良の最期も、アブサンの大往生とともに、心にじーんっときました。2015/03/21