内容説明
人を思う気持ちはいつだって距離を越える。離れた場所や時間でも、会いたいと思えば会える。「だって、わたしはどこにでも行けるから」―遠い隔たりを“ショートカット”する恋人たちのささやかな日常の奇跡を描いた、せつなく心に響く連作小説集。
著者等紹介
柴崎友香[シバサキトモカ]
1973年、大阪府生まれ。行定勲監督によって映画化された『きょうのできごと』で2000年にデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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hiro
84
四編の連作短編集。最初の短編は、「なあ、おれ、ワープできんねんで。すごいやろ」という、四編すべてに登場するなかちゃんの言葉で始まる。柴崎さんもSFを書くのかと思ったが、心配は無用、いつもの心斎橋、写真、映画、そして主人公たちが話す言葉はもちろん関西弁で、恋人たちの“日常”を描いた柴崎ワールドの作品だった。大阪でも離れて暮らす遠距離の恋人といえば、やはり東京になってしまうが、この作品が単行本化された15年前の、大阪と東京で離れて暮らす遠距離恋愛の恋人たちのことを思い浮かべながら読んだ。2019/07/02
翔亀
45
柴崎さんを読み続け8冊目。4短編所収。これまで、視線の運動-空間移動とか切り替えとか、技巧的な点に注目してしまって、本作でも<ワープ>という空間移動が効果的なのだが、改めて考えるとこの作家の魅力はそれだけではなく、本作品集は<恋愛以前>の男女の関係ということで共通していて、他に恋人(自称含む)がいる男女の関係が絶妙に繰り返される。<恋愛>への希求が、<ワープ>や急行電車や深夜バスや「翌日にメキシコに旅立つ」(4編掲載順)という、物理的移動をもたらすのだが、そこに未知への跳躍=希望があって、爽やかなのだ。2014/10/17
まひと
41
柴崎友香さん初読。登場人物の関西弁に慣れなくて戸惑いました(笑)「なあ、おれ、ワープできんねんで。すごいやろ」冒頭のなかちゃんの突拍子もない一言が印象的。なかちゃん、不思議な人でした。心の底からその人に会いたいと思えば距離なんて関係ない。ワープはできないけど、会いたい人に会いに行く時間なんてワープした時のようにあっという間なんだ。私たちは自分の意志でどこへだって行ける、物理的な距離も気持ち次第で乗り越えられる、そんな風に思わせてくれる一冊だった。会いたくても会えない日々を過ごしている方におすすめです。2015/02/08
なゆ
38
4つの短編どれにも、同じ空気感を感じる。ああ、柴崎さんの世界だなぁ。ある一日もしくは数日間に、目に移る光景と言葉を交わす人たち…とても限定的な空間なのに描写が繊細でこと細かなせいか、イメージがとても広がる。そして主人公の思考が過去や遠くに自由に飛び回るのも。今回は、登場人物たちがとてもフットワーク軽いせいか、ワープすらも信じてしまいそうに。遠距離恋愛、終わりかけの恋、好きになりそうな夜、なんか自由な空気がいっぱい。思い切って旅に出たくなる。そう、どうしても行きたいとこは「たぶん、そんなに遠くないから」2014/07/19
橘
28
ふわふわした緩やかな時間が流れていて、なんてことのない会話や出来事も、好きでした。別れた元恋人のことを、今どう生きているかわからないしもう会えない、というところにしんみりしました。前向きに。行きたいと思い立ったらすぐに行く、というのは良いですね。2015/10/24