内容説明
たった一人だけ園芸学校に落ちたのは何故だったのだろう?人は生まれ変わるのだろうか?生涯の様々なできごと、つげ義春らとの出会い、霊魂のことなど…さりげなさの中に誰にも書けない不思議な問いをひそませた、マンガと同じくらいに深くて魅力的な水木しげるの文章の世界。50年にわたって雑誌などに書かれたエッセイを集成した待望の一冊。
目次
落第記
戦争と糞
病める魂―太宰治のこと
わが心のニューブリテン島
楽園学入門―わたしの仕事と生活
猫の道
つげ義春氏との出遇い
奇妙な味
鈴木翁二くん
池上青年のこと
辰巳ヨシヒロと僕〔ほか〕
著者等紹介
水木しげる[ミズキシゲル]
1922年、鳥取県境港市生まれ。43年、応召、ラバウルで左腕を失い、46年、復員。紙芝居作家などをへて、65年「テレビくん」で第六回講談社漫画部門賞を受賞。以降、「ゲゲゲの鬼太郎」「悪魔くん」などで人気マンガ家に。03年、境港市に「水木しげる記念館」が開館。マンガのみならず文章のファンも多い
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
えみ
53
水木しげるといったら『ゲゲゲの鬼太郎』。鬼太郎から妖怪の世界に入り込んだと断言できるくらい妖怪の魅力はここで培った。そんな妖怪を感じることができた水木しげるのエッセイ。絶体絶命でも絶望せず、失望せず、常に淡々とあるがまま、置かれた環境になじみながら妖怪たちに息吹を与える。妖怪以上に妖怪を理解しているように見えた妖怪レジェンドの水木しげるの魅力が詰まった一冊。彼がどんな風に生きてきて何を思って様々な出来事を乗り越えてきたのか。幼少期の不思議な体験、受験失敗、戦争、貧乏生活、素の水木しげるを存分に楽しめた。2024/09/27
Shoji
35
戦争で大変なご苦労をなさった作者によるエッセイです。戦地での経験が通底しています。その意味では、たいへん考えさせられる内容にもなっていますが、決して暗くも辛くもなく、ざっくばらんとしています。著者は猫のように、奔放に気ままに生きるのを身上としたい由です。読者側の私も、心が楽になる感じがしました。本書から引用すると、幽霊は怨みから出て来る怖ろしいもので、復讐を目的としています。一方、妖怪は、もとからそこにある自然のもので、大して目的もなければ何でもない。ただ奇妙な愛嬌があるそうだ。妖怪になるのもいいな。2022/08/20
トムトム
25
物欲だけでなく、全ての欲を捨てれば心は平和。恋人?いてもいなくてもよい。結婚?してもしなくてもよい。子供?いてもいなくてもよい。今この瞬間が楽しければそれでよいという日々をおくれば、そのうち妖怪や精霊に会えるような気がします。水木さんのようになりたい、という欲すら捨てねば!私はまだまだ煩悩だらけです。2020/11/22
せっちゃん
15
感性が凄いです。昭和を思い出す1冊。2021/11/17
ほしけも
9
あの性格だから壮絶な状況でも生き延びたのか、壮絶な生き方をしたせいでなにもかもを悟ってしまったのか…戦争体験ももちろん恐ろしいが紙芝居、漫画の世界も餓死と隣合わせというから恐ろしい。そういう世界に住む人間たちも妖怪じみている。。死線をみているからこそ「あっちがわ」を感じることができるんですね。太宰治が嫌いだという話は痛快でした。2014/05/15