内容説明
江戸初期、北関東でひとつの村が地上から消えた。「サンリン」と呼ばれる聖なる空間で発見された老人から赤子までの骸は三百余。ここで何が起きたのか。歴史の闇に葬られた謎の“大事件”を甦らせて、高い評価をえた暗黒と戦慄の巨篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤枝梅安
7
物語は全滅した村の確認に派遣された一人の武士の述懐から始まり、 時間を遡って、事件の真相に迫っている。 役人支配の腐敗と、農民達の純粋な願いのはざまで、 村の肝煎り・石橋藤九郎は苦悩しつつ村人の懐柔と役人への申し開きに苦慮する。 しかし、思わぬところに藤九郎を陥れる輩がいたのだった。 濃密な文体と複雑な構造で、読者に緩むことを許さない厳しい作品である。 そこに作者のこの事件を通しての民衆への愛情が感じられるのである。2009/05/17
yamaton
2
一村亡所 ― 徳川の体制がまだ確固として定まらない時代、とある村が女子供に至るまで全て虐殺される事件があった。物語はその結末から始まり、なぜそのような悲劇が起こるに至ったかを圧倒的な筆力を以って綴ってゆく。誤解が誤解を生み、疑念が疑念を招き、不可避的に悲劇に至る。その過程で描かれる人の闇、農村の闇。巻を措く能わずとはまさしくこの本のためにある言葉だ。2009/12/14
つちのこ
1
入院中に読了。歴史に基づいたノンフィクション的な時代小説を書かせたら右に出る者はいない作家だと思う。2001/09/03
あや97
0
15年以上積読状態だったのがもったいなかった作品。いくつものターニングポイントで悉く悪いほうを選び、「一村皆伐」の悲劇的結末へと向かう過程を的確で重厚な文体で描き切った傑作。一気に読み進めるのが惜しく感じられるほど物語に浸った。1週間かかって読了。2016/08/02
kujimami
0
閉塞感と絶望感にやられながら読み終えた。どんどん追い詰められて身動きが取れなくなっていく若衆頭の姿が辛い。藩ぐるみで隠蔽しようとした大虐殺だけど、伝える人はいるもので。こういう残虐な仕業も、藩にとっては処分の手段の一つに過ぎなかったのだろう。だとすれば、歴史に埋もれている同様の事件もまだまだあるんじゃないかと思えてくる。2018/05/16
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- 和書
- 流砂 〈第20号〉