感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
三井寿里
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ミステリーと言っても、殺人事件の犯人探し、というわけではありません。それよりもっと恐ろしく、不安にさせてくれるのは、人間の闇、二面性を描き出して、ざくざく胸をえぐってくるからでしょうか。一番怖かったのは「疑惑」、一番不安になったのは「奇怪な再会」、見事だったのは「藪の中」。特に「疑惑」は、正気と狂気、日常と異常、夫と妻の境目を鮮やかに見せつけてくれるようです。 それにしても、ホームズばりの推理を披露する、風采の上がらない名探偵、本多保の物語を最後まで読みたかった。2016/03/17
のび子
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芥川龍之介をあまり読んだことがなかったが、やはり文豪なのだなあと思った。まずはじめの「開化の殺人」で並々ならぬ語彙と知識量を見せつけられ、これは平易に読めたものではないなあと思わされたが、つぎの「奉教人の死」は難解な言葉もなく、物語に入り込みやすく、とても読みやすかった。読了後あらすじだけで、涙ぐみそうになるほど美しい話だった。文章の雰囲気を自在に変える腕はさすがのものだなあと思った。狂気じみた話が多く、人間の妄想が現実となって表れてしまう作品が何点かあり、誰でも気が狂う可能性があるんだと思わずにはいられ2011/11/25
冬至楼均
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まさしく藪の中。2010/04/28
炬燵職人
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芥川龍之介のミステリを取り扱った短編集。初めて「藪の中」を読み感嘆せしも、特に記憶に残るは「開化の殺人」、「疑惑」の2作。共に罪を背負う人間の独白を描いている作品であるが、「開化の殺人」は狂気に溺れる人間を、「疑惑」は「罪と罰」を彷彿させる正気が故に罪悪に圧される人間を描いており罪悪をここまで些細に描けるものかと驚いてしまった。変幻自在とも言える芥川龍之介多様な作品、作風を堪能できる良い一冊。2024/11/25
hapim
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真相がわからない話が多い。多分こうなんだろうな…というところで終わるのがまた怖い。芥川龍之介は久々、もしくは初めてかも。最初の数作は読み解くのが難しく、昔の文章は無理かな…と挫折しそうになったけど、諦めなくてよかった。映像で観たくなる。魅力的な女性が多いのも印象的。2023/09/28