内容説明
1928年、ライン連邦バイエルン王国に突如現れた奇妙な少年。穴の中に一人で暮らし、言葉もほとんど知らなかったこの孤児は、数人の養父の手で教育を施されるが、五年後、謎の男に暗殺される。少年は果たして何者だったのか?漂泊の王子か?稀代の詐欺師か?裏返しのエディプス物語として稀代の怪事件を読み解き、その謎に迫るスリリングな評伝。
目次
壜のなかの手紙
ニュールンベルグ登場
塔と地下牢
霊媒カスパール・ハウザー
夢のなかの城
顔のない刺客
カスパール・ハウザー詐欺師説
性別のふたしかな男
呪われた古城
三度死ぬ屍体〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
OZAC
8
19世紀のドイツに突如現れた謎の少年についてかねてより興味があり、このほどようやく彼の数奇な生涯を読み解くことができた。時系列が前後するやや難解な構成ながら、同時代の諸国の情勢や時の権力者たちの思惑などは読んでいてすこぶる面白かった。近年になって、彼の遺品が遺伝子分析にかけられたらしいが、バーデン王家とのつながりは断定されていないという。はたしてカスパール・ハウザーとは誰だったのか。2021/10/22
甲斐シュンスケ
1
好きなマンガに時々引用されていた「有名な不思議な話」について知りたかったのと、種村季弘の著作が読みたかったので着手。 19世紀初頭にドイツの都市に現れた謎の少年、カスパール・ハウザーの半生を丹念に追い、最後に言語の二面性を説いて終わるという筋道が圧巻。 半生の部分は証言やアリバイや著作を網羅する様が探偵小説にも通じ、最後の哲学的な分析によって世界の根底が揺さぶられる心地よい頼りなさ。 種村季弘の本もっと読みたくなった。2013/09/10
黒蜜
0
面白かったです。時代の象徴のような人ですが、さりとて一人の個人にどこまで影響力があったのかは疑問。2021/02/14
かの子
0
かなり前に読んだ本を再読。ヘンネンホーファーは似顔絵からして悪者顔だと思ってしまった。悪者?が得をした結末の事件という印象でした。 後半は抽象的で読みにくかったです。2020/05/06