内容説明
パパとママが住むという「碧い惑星」を信じ、ビルディングからの脱出を夢みるアナナス人。美しいすみれ色の晴をもつ同室の少年イーイーは何者なのか。ビルディングの出口をもとめ、広大な迷路をひた走る二人が見たものは。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mayu
50
再読。宇宙のどこかに存在するかもしれない鐶の星。コンピュウタに制御された無機質な巨大ビルの中で少年たちが暮らす。遥か遠くの蒼い星に住むママとパパに思いを馳せ、蒼い星にある海に憧れるが、その存在は曖昧で幻影でしかない。思春期にある恋にも似た想いをはらんだ少年たちの友情。精油がないと生きられないイーイーの抱える事情も、アナナスの忘れたままの大切なこともまだ謎に包まれ、日常が変わりゆく不穏さだけがある。制御された世界において、個人的な深い感情の交わりを持つクロスは悪で、完全なる初期化が必要なものなのか。下巻へ。2024/06/13
chacha子
21
夏が近づくと飲みたくなるソーダ水のように、海を想うたび読まずにはいられない本。宮沢賢治の流れをくんだ美麗な文章は、またたくまに読み手の意識をとらえ、別の世界へと運び去ってしまうが、この作品の魅力はそれだけにとどまらない。主人公たちが抱える不安、焦燥、妬心、そして友情は、作品のもつ退廃美に抗うかのように澄明な輝きを放ち、停滞したテレヴィジョン・シティを循環させていく。2015/06/01
antoinette
17
巨大な閉鎖空間。無垢で硬質な少年たち。……こんなに淋しい物語だったっけ。偏愛本です。なんて贅沢な舞台なのでしょう。〈鐶の星〉の広大なビルディングの中を動くのは、モブを除けば実質4人の少年だけという、極端な人口密度の低さ。ここには少年たちを際だたせる白く無機質な空間だけでなく、テレヴィジョンの映像と合わせて作り上げられた遊園地があり、海や空、沙漠といった疑似自然まで揃う。全てが快適、無駄とも汚れとも無縁な少年たちのミニマルな生活ぶりは軽やかで羨ましい。しかし、ここは決して楽園ではないのだ……(続く2017/07/08
橘
17
面白かったです。不思議な世界観が難しくもありましたが、綺麗で好きでした。アナナスは忘れている、と繰り返すイーイーが悲しくも、この2人の関係も好きです。正直であることは罪悪で、最も身勝手な自己主張、といったところが印象的でした。謎は深まるばかりなので、下巻が楽しみです。2015/02/17
柊渚
14
感想は下巻に☁*2022/01/17
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- 和書
- 医者と患者 岩波現代文庫