内容説明
乱歩最愛の海外ミステリ界の巨匠たち。ポー、クリスティ、クィーン…最良の作家・作品論を網羅。
目次
入り口のない部屋・その他
探偵小説の限界
創意の限度について
「謎」以上のもの
探偵小説と瀉泄
二つの角度から
グルーサムとセンジュアリティ
異様な動機〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
浅香山三郎
10
江戸川乱歩コレクション第2巻の本書は、乱歩の海外ミステリについての、批評・紹介を収める。乱歩が作家であるとともに、海外作品の紹介に努めた人物といふことは、知識として知つてはゐたが、戦前から作家の文体とはまた違つた学究的な視角から、探偵小説論・探偵小説展開史を書いてゐることに驚く。短編と長編、文学全体のなかでの探偵小説の位置づけを始め、探偵小説の歴史を謎物語と悪漢小説と怪奇・怪談小説の3つの源流と、本格・サスペンス・ハードボイルドといふ3つの分流で説くなど、乱歩の整理は卓越してゐる。2024/06/05
ヨッシー
5
乱歩は熱心な研究家だったんですね……英語で原書・評論をこれほど読んでいたとは知りませんでした。1940年代の海外ミステリの傾向が伺われて面白いです。また、乱歩の書く書評が上手くて、とりあえず読んでみたくなります。フィルポッツ読みたいな……。タイトルこそ『クリスティーに脱帽』ですが、どうも乱歩のクリスティー研究はイマイチだという印象がありますね……いかんせん、読んでいない物が多過ぎると思います。バークリーについて全く触れていないのも気になります。ただ、ネタバレをひたすらつぎ込むのだけは勘弁してください(泣)2011/06/21
ブルーローズ
4
乱歩評論のよさが冴える一冊。クリスティが表題だが、カー、チェスタトン、ドイル、クイーンをはじめとして、広い視野で探偵小説・推理小説について分析しています。ちゃんと原書で読んでいたことを知ったのも驚き。2011/06/01
Hiro
1
幾つかの短編のほかはまともに読んだことのなかった著者のエッセイを読んでミステリーに傾ける情熱の強さに本当に感心した。よくこれだけ読んで記憶しているものだ。勉強熱心の一語に尽きる。お陰でポーに始まるミステリーの歴史がよく分かるしクイーン、カー、クリスティーなどの大家の位置付け、それに未知の傑作群の存在に目を開かされた。でもこれらは全て終戦後10年以内の文章ばかりなので今の業界の展望にはならないけれど。いや、ここに紹介されている作品の多くが今でも入手可能で現に私の読書欲をそそっていること自体凄くないか?2021/07/14