内容説明
お岩さんで知られる四谷怪談の実録版、読本や歌舞伎で語り継がれた、清玄・桜姫物の勧化本版、鶴屋南北の『怪談岩倉万之丞』、怪談落語を確立した林屋正蔵の怪談咄、そして『雨月物語』…。今では読むことのできなくなった珍しい作品を多数収録し、代表的な怪談を集めた、江戸の闇と不思議を現代語訳でたっぷり味わえるアンソロジー。
目次
小品集
四谷雑談集
勧善桜姫伝
怪談岩倉万之丞
怪談桂乃河浪
雨月物語
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あなた
7
絶版河出怪談集シリーズの1冊。高田衛が編纂しているのだから買わないわけにいかない。「四谷雑談集」「勧善桜姫伝」など収録。日本の怪談は怪異がおきても、「何故」かを説明するよりも「何のために」かを説明する場合が多い。西欧の怪奇と比較すると日本の怪異は共同体形成に編み込まれていく点で「機能的」といえるのかもしれない。2009/07/24
Masato Lou=Hardy
6
…「雨月物語」から「吉備津の釜」「青頭巾」、その他、江戸期の怪異小説集五冊から選んだ小品25篇を収録。だがメインは四谷怪談の元ネタで作者不明の「四谷雑談集」や「勧善桜姫伝」、鶴屋南北の「怪談岩倉万之丞」林屋正蔵「怪談桂乃河浪」といった長い物語です。たぶんこれらを手軽に読む にはこの文庫が最も手っ取り早いと思います…2018/06/14
メイロング
3
新耳袋にありそうな現代的な物から、まさに芝居の怪談ものまでたっぷり。男の浮気で女がキレて、の話が多い中で桜姫伝の味わいが際立つ。神社仏閣に行くたびに怪異フラグが立つ姫。ネトゲ環境を与えて引きこもらせるべきでは。解決編はミステリーっぽい謎解き。吉備津の釜のラストシーン超こわい。なんでこんなに映像的なの。 2017/03/14
迦陵頻之急
1
お岩さん伝説に取材した写本の「四谷雑談集」を収録。とは言えこれが鶴屋南北の四谷怪談の直接の元ネタというわけでもなし、本当に四谷怪談初演より古いのかも曖昧。南北以前のお岩さん伝説というものが、どうも良く判らない。四谷の田宮神社御岩稲荷では、お岩さんは怨霊ではなく貞女だと主張する一方、祟りを恐れる芸能関係者のお参りは受け入れているし、お参りを怠った関係者に怪事が起こったという話を否定するわけでもない。それはともかく、怨霊ではなく貞女だとしても、女性の守り神として不心得な男に罰を下す事は満更矛盾してはいない。2025/01/15
mareureu
0
近世期に刊行された仮名草子・読本・実録・合巻などから話を集め、現代語訳で収めた怪談集。各話がほぼ時代順の配列になっており読みやすいです。婬蛇、化け猫、老狐など動物にまつわる話も多い「小品集」は妖怪ファンの方にもお薦め(マニヤの方は既読でしょうが……)。女の怨念に震えあがること請け合いの「四谷雑談集」「怪談岩倉万之丞」、美姫と狂僧の運命のもつれに息を呑む「勧善桜姫伝」、落語家が作者とあって怖いながらも明るい「怪談桂乃河浪」。有名な「雨月物語」はほかの種類の訳と読み比べてみてもおもしろいかもしれません。2016/01/01