感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
明石です
2
ゾクゾクするほど素晴らしい掌編小説集。 80年代後半、バブル絶頂期に都市生活を営む20代の女性たちが、満たされた日々の中で、それでも今よりほんの少し良い暮らしを求めて男との関係を築き、煩悶する物語。著者の半ページにも満たないあとがきも、批評家の方による愛ある解説も背筋が震える素晴らしさ。田中康夫の感性は、時代の側に選ばれたものなんだろうな。バブルが弾け、本作が描くような「ちょっといい暮らし」が絵空事になった時、人は彼の小説を求めなくなった。でもだからこそ、この人の小説には無二な魅力があると私は思っている。2024/09/22