内容説明
流れる水、波立つ水、あるいは光り、たぎる水。さまざまな水の相を背景に、家族、男と女、また母と娘たちがたどる危うい生の実相を、迫真の筆致で刻みだした連作集。水がわたしに落ちてくる、早く眠らなければ…。
目次
ボーア
多島海
番鳥森
浦
水府
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あかつや
4
短編5編。これらはシチュエーションや人物は違っていても、だいたい同じことを扱っている。あるひとつのものを角度や場所を変えながらデッサンしてるようなもんかな。決して愉快な話ではない自身の体験に根差したそういうのを、こう何度も繰り返し書き続けてさぞや辛かろうに、作家とは業の深い職業だ。業の深さで言えばこの人の父ちゃんも大概だもんなあ。好きな話はまず表題作。これは叙述にも仕掛けがあって、途中で気が付いてハッとさせられた。家族の問題には和解はなく、どの程度で諦めるかだよなあ。あとは「浦」も最後やぶれかぶれでいい。2019/09/30
Mark.jr
1
水のイメージを中心に描かれた、母になった自分と父親になった男。自伝的色が強く、少し中上健次を想起させる部分もありますが、入水して死んだ父を持つ著者にしか書けない作品群だと思います。2019/12/25
Yuki
0
表題作のみで十分です。2021/12/30