内容説明
ここに扱われている薔薇は、おおむね狂気と死との彩りであって、その香りは苦く、色彩はむしろ幻覚に近い。薔薇への偏愛がいざなう、神秘にみちた薔薇園の迷宮…秘密の花園では少年も私もこの世のものではなくなり、牧神や聖女は現実となる…妖しく甘美な色彩と芳香にひそむ死と幻想と耽美の世界に仕掛けられた薔薇の罠。名作『虚無への供物』の作者の、薔薇ミステリー集大成。妖しく薫る12の薔薇奇譚。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
41
薔薇によって紡がれる夢と現、正気と狂気が混沌とする幻惑の短篇集。中井英夫作品特有の美青年や美少年に対する同性愛的感情や美醜や老若の対比、幻想的な甘い夢への冷笑という毒もふんだんに盛り込まれている。とらんぷ譚収録作、多数。特に西洋のお伽噺のように展開される『薔薇の縛め』や首を絞めたくなるような美少年に薔薇園へ監禁される『薔薇の獄』が印象深い。そして暗号文での解読法にも探偵小説における豊潤な美学への尊敬すら、感じる。これらの作品は津原泰水さんの『ピカルディアの薔薇』にも影響したかと思うと感慨深い。2013/10/19
芍薬
13
麗しく蠱惑的で高潔な植物“薔薇”に魅せられた短編集。噎せ返る薔薇の薫り、絡まる根にクラクラしました。 2012/06/07
ふみえ
9
薔薇の妖しさに浸りたくチョイス。夢野久作系はどう解釈すれば?でも薔薇に身を委ね、香に癒されたい。2018/10/30
千葉子
7
幻想文学が好きなら是非読んでおきたいほど美しくて香しい、それでいて死と狂気がまとわりつくような、薔薇にまつわる12のお話。同性愛や性的表現が苦手な人にはあまりおすすめはできませんが。 もっとこの中に…薔薇園に浸っていたい。いやむしろ閉じ込めてほしい。2012/09/26
skellig@topsy-turvy
5
薔薇、薔薇、薔薇、見事なまでに薔薇まみれの短篇集。とらんぷ譚シリーズからのものも多いけれど、ひたすら緻密な美文の薔薇ワールドに浸れました。中井氏本人が巻末で語る通り、「ここに扱われている薔薇は、おおむね狂気と死の彩りであって、その香りは苦く、色彩はむしろ幻覚に近い」のでした。2012/10/19
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