内容説明
夢と現実、太古と現代の境いを超えて、幽冥の宇宙をただよいさ迷う女と男…。寄る返ない悲しみを抱えながら、いまを生きる女の半生の性を「古事記」「老子」の世界を通して、生きとし生けるものの根源的な寂寥に重ね映す著者の代表作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
松本直哉
22
姿の見えない男が訪ねてくるのを夢見ていた女主人公のもとに、ある晩本当に垣根を越えて訪ねてくる隣家の幼馴染の男を、灯りもつけずに迎える場面が艶めかしい。タイトルの漢字四文字につけられた振り仮名「かたちもなく」、万物の始原の、何も見えず何も聞こえない混沌、そこから人間も生まれてきて、死ねばそこに帰っていくような世界への憧れから生まれてくるのは、視覚から解放された、ただ相手の息遣いだけの聞こえるような、原初的な出会いと交わりであるのかもしれない。形而上のものへの希求こそ逆説的に最もエロチックなのであろうか。2025/12/31
あ げ こ
2
性の色合いを帯びた記憶の断片。脈絡もなく、男と女、両の口から語られる情景が、彼等の内を流れる、形のない悲しみの輪郭を、ぼんやりと映し出す。性を異にする者との摩擦によって生まれたその悲しみは、すくい上げた瞬間零れ落ちてしまう、水のようなもの。自らが抱えた、決して掴むことが出来ないものであるからこそ、逃れることが出来ない悲しみに対し、生じたことさえも当然であると、静かな諦めを覚えながらも、心を揺さぶり続ける暗い感情に戸惑う男女の姿が、甘さを伴う苦味と、滋味豊かな寂寥感を残す。2014/01/14
Seis Gatos Negros
0
大庭みな子氏の小説の中では一番好き。きれいな結晶のように、余計な部分がなく、詩的にさえ思える。イメージがイメージを呼んで、つながって、こんなに美しい小説もあるのかと思う。
寛理
0
☆☆ かたちもなく=寂寥というタイトルの意味はなんとなくわかったが、つまらなかった。「大和朝廷の気持ちがわかった」とか書いてあって天皇制小説ではと思った。谷崎賞受賞作だが、谷崎の「少年」っぽいところはあった。2020/03/28




