内容説明
夢と現実、太古と現代の境いを超えて、幽冥の宇宙をただよいさ迷う女と男…。寄る返ない悲しみを抱えながら、いまを生きる女の半生の性を「古事記」「老子」の世界を通して、生きとし生けるものの根源的な寂寥に重ね映す著者の代表作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あ げ こ
2
性の色合いを帯びた記憶の断片。脈絡もなく、男と女、両の口から語られる情景が、彼等の内を流れる、形のない悲しみの輪郭を、ぼんやりと映し出す。性を異にする者との摩擦によって生まれたその悲しみは、すくい上げた瞬間零れ落ちてしまう、水のようなもの。自らが抱えた、決して掴むことが出来ないものであるからこそ、逃れることが出来ない悲しみに対し、生じたことさえも当然であると、静かな諦めを覚えながらも、心を揺さぶり続ける暗い感情に戸惑う男女の姿が、甘さを伴う苦味と、滋味豊かな寂寥感を残す。2014/01/14
Seis Gatos Negros
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大庭みな子氏の小説の中では一番好き。きれいな結晶のように、余計な部分がなく、詩的にさえ思える。イメージがイメージを呼んで、つながって、こんなに美しい小説もあるのかと思う。
寛理
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☆☆ かたちもなく=寂寥というタイトルの意味はなんとなくわかったが、つまらなかった。「大和朝廷の気持ちがわかった」とか書いてあって天皇制小説ではと思った。谷崎賞受賞作だが、谷崎の「少年」っぽいところはあった。2020/03/28