内容説明
偏愛する映画作家、ブニュエル、ベルイマンなどの諸作品をめぐって印象批評をくりひろげ、女優カトリーヌ・ドヌーブの妖しい魅力を分析し、はたまたお得意のドラキュラ物をはじめとする怪奇・恐怖映画の数々をとりあげながら、そのおもしろさについて蘊蓄を傾ける、独特の批評眼が随所に光る映画エッセイ集。「書斎派ダンディ」として知られた著者がまとめた唯一の映画の本!
目次
『恐るべき子供たち』を見て
『エクソシスト』あるいは映画憑きと映画祓い
「マラー/サド」劇について
現代の寓話―パゾリーニ『テオレマ』を見て
ナチスをめぐる相反感情
『バーバレラ』あるいは末来像の逆説
『昼顔』あるいは黒眼鏡の効用について
ルイス・ブニュエルの汎性欲主義
非社会的映画のすすめ―W.ワイラー『コレクター』を見て
ベルイマン、この禁欲的精神
カリガリ博士あるいは精神分析のイロニー
サド映画私見
映画におけるエロティック・シンボリズムについて
恐怖映画への誘い
怪奇映画の季節 ドラキュラの夢よ、いまいずこ
ショックについて
ドラキュラはなぜこわい?恐怖についての試論
カトリーヌ・ドヌーヴ―その不思議な魅力
愛の形而上学と死刑―大島渚『絞死刑』について
階段闘争か生物学主義か―大島渚『忍者武芸帳』を見て
黒い血の衝撃―三島由紀夫『憂国』を見て
デパートのなかの夢魔―『白日夢』のノスタルジアについて
エロス的風俗に関する対話
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
125
澁澤龍彦による偏愛的映画論。1978年の刊行なので、取り上げられている映画はいささか古いのだが、いずれも映画史に残る傑作揃い。特に偏愛の対象となっているのがルイス・ブニュエル。『アンダルシアの犬』、『昼顔』、『哀しみのトリスターナ』などがそうだ。つまり、デカダンスと陰影とエロティシズムを兼ね備えた作品ということに他ならない。ちなみに、女優ではカトリーヌ・ドヌーヴが澁澤氏のお眼鏡に叶うのだが、これもいかにもそうだろうな、と思わせる選択。なお、ベルイマンを「禁欲」という観点から捉えているのには深く納得した。2014/03/22
Aster
46
ブニュエルは色々見なきゃな〜って思いました。後は恐怖映画とか?澁澤龍彦だからこそそういうものを好んで見てるんでしょうけど、自分もホラー映画をある程度嗜めるようにはなりたいなと思う。まぁ映画論ですけど、エロティシズムとかの話は流石という感じ、本当に面白い。2021/03/29
メタボン
30
☆☆☆★ 映画評論を集めたもの。と言ってもそこは澁澤。一筋縄ではいかないマニアックな映画がその対象。私はそのほとんどを見ていないが、澁澤が取り上げる映画だけに、当然その内容には関心がある。パゾリーニ、ブニュエル、ベルイマン、武智鉄二。2021/07/15
青蓮
15
澁澤龍彦による、映画についてのエッセイ。ここに取り上げられている映画は「エクソシスト」と「カリガリ博士」しか見たことがなかったので、他の映画についてはよくわからない部分が多かったです。でも読んでいて、それらの映画がみたくなりました。本書には取り上げられていなかったけれど、表紙の写真として使用された無声映画「アンダルシアの犬」についてもエッセイを書いてほしかったな。久しぶりに「カリガリ博士」「エクソシスト」「アンダルシアの犬」を見たくなりました。2013/09/01
swshght
13
澁澤龍彦の初の映画評論集。まず表紙が不気味なインパクトを放つ。ブニュエルの『アンダルシアの犬』ときた。評論は主に筆者が60年代に発表したものを中心とする。論じる作品の多くはフランス映画や恐怖映画であり、エロスや死を主題としたものばかりだ。なかにはサディズムやネクロフィリアもある。これは一筋縄では行かない。まさに澁澤の十八番といったところか。そして、それらのテクストは知性に満ちている。神話、絵画、文学を横断しながら、彼は映画の官能的かつ不気味なイメージを読み解いていく。カトリーヌ・ドヌーヴ論は必読!面白い。2013/10/21
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