河出文庫<br> 鮫

河出文庫

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ 文庫判/ページ数 261p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784309400044
  • NDC分類 913.6

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

おたま

9
非人の子として生まれ幼少の名を「鮫」と呼ばれた男。応仁の乱の頃、飢饉や戦乱に巻き込まれる。人を殺し、人の肉も食べて生き抜く。自分の子を宿した女も殺される。そうした人生の悲惨の中で、蓮如の娘見玉尼と出会い、信仰に目覚める。その後、蓮如の門下、蓮見として仏門に入るのだが、勃発した一向一揆の中で、一指導者として尽力することになる。信仰者として生きる道と、一揆の指導者として人を殺めることも辞さぬ、矛盾に満ちた生き方を余儀なくされる。そのように生きる生き方の中に作者は人間の悲惨と救済という主題を塗りこめている。2020/02/29

雨松

2
凄まじく力強い作品。生きるとは何か罪とは救いとは、と主人公が問い続け、最後は虚無を望む。応仁の乱の頃の悲惨な世界はただ日本の中世を描き出すばかりではなく、時代や国を超えて戦争を続ける人間の醜さや愚かさ、虚しさに通じ、現代を生きる我々の心を抉る。皆川博子氏が推薦されていた図書とあって女史の歴史小説を好む方にはオススメしたい。女史の作品はこの鮫より耽美寄りだが。手に入りにくい絶版本だが耳障りの良いことばかり書いた昨今の所謂共感小説より金を出して読む価値はあると声を大にして言いたい。2024/10/22

西葛

1
今はもう殆ど読まれてないのでしょう。室町時代後期の応仁の乱から加賀の一向一揆に至るまで、幼年期の「鮫」、本願寺坊主の「夜明け」の二篇。「鮫」と呼ばれ差別された非人の幼児が飢饉のなか家族を殺され、一人、生きるため「自然状態」へ放り出される。飢えを前に人肉食の禁忌などまるで意識されない。罪とは、言葉とは、衣食足りた、嗜好品なのか。戦乱の世における不況は、兵を唆すための手段に堕ちる。宗教戦争の鋳型を観た気がする。構成はけっこうちぐはぐ。2022/01/08

Peter-John

1
真継伸彦の『鮫』と『無明』は時代小説のなかでも大傑作だ。 蓮如の娘,見玉尼が亡くなる10日前,鮫(と呼ばれる男)は生き延びるための人肉喰いや強盗,殺人など,自分のこれまでの所業をあらいざらい告白した。 「疾風(はやて)殿(鮫のこと),念仏申されませ」  やがて薄明の底から貴女様はおれの顔を見つめながら,かぼそい声で仰せられた。 「くりかえし,念仏申されませ。そなたの極楽往生はただ一度の念仏で決定(けつじょう)いたしておりまする。されど,そなたはいまだ長い生涯を過ごさなければなりませぬ。2019/12/09

n1

1
また、凄い小説に出会ってしまった。2016/02/17

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/292390
  • ご注意事項