出版社内容情報
がんは現代病ではなく、生物に最初から備わったバグである。体内で「進化」する、がんの新事実を解明。未来の治療の可能性に迫る!
内容説明
この病気は進化論で解明できる。あらゆる多細胞生物を苦しめてきた病にどう向き合うか?体内で「変異」「適応」するがんの正体と、その治療の未来にも迫る!英『タイムズ』紙年間ベストブック選出。
目次
第1章 地球に生命が生まれたところから話は始まる
第2章 がんは生きるための代償である
第3章 がんはどこからやってくる?
第4章 すべての遺伝子を探せ
第5章 いい細胞が悪い細胞になるとき
第6章 利己的な怪物たち
第7章 がんの生態系を探索する
第8章 世にもけったいながんの話
第9章 薬が効かない
第10章 進化を味方につけてゲームをする
第11章 がんとのつき合い方
著者等紹介
アーニー,キャット[アーニー,キャット] [Arney,Kat]
サイエンス・ライター。ケンブリッジ大学で発生遺伝学の博士号を取得。イギリスのがん研究基金「キャンサー・リサーチ・UK」の科学コミュニケーション・チームで12年間勤務した経験をもつ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アキ
97
がんとは生活習慣による現代病などではなく、多細胞生物の基本システムにはじめから組み込まれたバグであり、ヒト以外の多細胞生物にも見られるものである。ヒトのがんの90%が50歳以降に出現するのは、生殖を優先する進化に則っている。70代になるとほぼ全ての細胞にがんドライバー変異がある。危険因子を避ければ生じない訳ではない。しかし周囲の正常な細胞ががんの増殖を抑制している。がん細胞も環境に反応するのだ。神経膠腫の細胞が健康な神経細胞とシナプスを作り正規ルートをハイジャックするなどの最新の知見も知ることが出来た。2021/11/23
DEE
12
細胞分裂をする以上はがんを防ぐことはできないし、寿命が延びればそれだけがんに罹る確率も上がる。 がんを部分的な病と捉えるのではなく体全体で見る。単独の薬で治療しようとするのは、著者の言葉を借りるならショットガンでハリケーンに立ち向かうような無意味なこと。 そうではなく完全に取り除けないなら上手く共存していくという適応療法も今後は必要なのだろう。言葉で言うのは簡単だが、実際に罹った時に何ができるだろうと考えてしまう。 2022/01/17
じゅん。
11
薬を標的に投与することで一時的にガン細胞を殺したかに見えるが残ったごく一部の免疫を持ったより強力なガン細胞が増える。ダーウィンの進化説を用いて細胞にも自然淘汰が起こる事を説明する。少し前にカーソンの「沈黙の春」を読んだがそれとも重なる部分が多かった。ようは、Aを殺すその他の捕食者までも消し去ることで本来なら生きられないAが繁殖する原理だ。様々な比喩を用いているため、理解を助けてくれたし、ガンへの理解も深まった。2022/06/10
はやたろう
11
がんに対する、いやがん細胞に対する認識が変わった。がんは生物の進化と同様に体内で生き残りをかけて進化している。だからこそ、多くの研究がされているにもかかわらず今だに完治は難しい。特に進行性のそれは。さらに医学界、製薬業界のアプローチ、考え方が凝り固まった現状ではなおさらだ。人生が長寿化する中で、ある遺伝学者の言った「ゴールは、十分に生きてがんより先に死ぬことが」が未来なのかな。2022/01/16
マイアミ
8
★★★ 人類史上最も長い期間感知することのできなかった病気ランキング第一位は……「癌」です。と、数世紀後の人類がそんなランキング発表を行っているに違いない。ウイルス感染症には人類が本気になれば僅か一年半でワクチンを開発できたが、癌に関しては未だ完璧な治療法はない。それはなぜか? その問いに答えをくれる一冊だった。そうなぜなのか? それは腫瘍して一塊に見える癌でも遺伝子は一様ではなく、それぞれの細胞が独自に変異(進化)しているためだと言う。癌細胞がそこまで多様だとは全く知らなかったので唖然とした。2021/10/31