出版社内容情報
奇妙な老人との約束を思い出した女の子が、まさにそうしようとしたことで、老人の死を知る――初期傑作、待望の邦訳刊行
内容説明
一度だけ会った奇妙な老人との約束を思い出した女の子がまさにそうしようとしたことで老人の死を知る―人生の悲哀をゴーリー風味に味つけした大傑作。
著者等紹介
ゴーリー,エドワード[ゴーリー,エドワード] [Gorey,Edward]
1925年、シカゴ生まれ。2000年没。独特の韻を踏んだ文章と独自のモノクローム線画でユニークな作品を数多く発表した
柴田元幸[シバタモトユキ]
1954年、東京生まれ。アメリカ文学研究者。2005年、『アメリカン・ナルシス』(東京大学出版会)でサントリー学芸賞受賞。ほかの著書に『生半可な學者』(講談社エッセイ賞受賞)などがある。2010年、ピンチョン『メイスン&ディクスン』(上・下、新潮社)で日本翻訳文化賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
旅するランナー
226
何とも言えない切なさに囚われる。時は過ぎ去る。何日か、何週間か、何ヵ月か、何年かが、あっという間に(8ページくらいで)過ぎていく。思い出した頃に、また読みたくなるであろう、エドワード・ゴーリーの静かな名作です。2021/06/03
aquamarine
89
いつも通りの緻密さですが、今回はいつもの子供に残酷だったりよくわからないけど優しい、とは違います。女の子が家族とともに海外へと渡り、色々な経験をしますが、楽しいはずのそれがどこか不穏な様子で描かれます。彼女はある老人と出会い、一つの約束をするのですが…。変な形のトピアリー、片足の欠けた彫像、無を感じるような背景…いったい何を意味するのでしょう。いつもの猫と奇妙な虫だけが妙な安心感を与えてくれます。でも、いつもと違う切なさをまとってもやっぱりゴーリーはゴーリーです。何度もめくって隅々まで堪能しました。2017/12/12
☆よいこ
85
分類72。残酷ではないけど物悲しい。11歳のドゥルシラは海を渡って外国に行く。あまり幸せそうではないドゥラシラを置いて両親は出かける。スクリム=ショー嬢に連れられて、ドゥラシラはクレイグ氏を訪ねる。荒れかけた装飾刈込(トピアリー)のある庭で語り合い、ドゥラシラはクレイグ氏とある約束をした。しかし、ドゥラシラはその事をすっかり忘れてしまった。何年もたち、ふと思い出したドゥラシラは行動を起こすが、その事である事実を知る「自分の怠惰を痛感した」▽怠惰は罪2022/01/30
gtn
85
巨大な黒い絵画が何か分からない。なぜ景色を眺めなければならないか分からない。なぜ両親が去ったか分からない。思い出したように約束を果たそうとするが、相手がいない。すべてが遂げられないまま、時間だけが過ぎていく。2019/11/19
敬老の寺ちゃん
82
久しぶりに読んだゴーリーの絵本。いつものおぞましい内容かと思いきや、何だか不思議で何だか切ない1冊であった。主人公の少女が旅先で出会った老人。セレブばかり集まっているような会合の中、一人浮いているような老人。彼との約束を大人になってやっと思い出す主人公。思い出した側から思い出の品を失う。妙な話だが何だかわかる。老人はひょっとしたら認知症だったかも知れない。我々は生きていて、社交辞令的に人と接する。社交でのうわべの優しさを真剣に喜ぶ人がいる。遅れてその人の孤独に気付くと、酷い自分に気付く。そして哀しくなる。2017/11/14