内容説明
あまりに純粋で清らかな魂が汚れたこの世から昇天するまでを独自の手法で描いた傑作。
著者等紹介
ゴーリー,エドワード[ゴーリー,エドワード][Gorey,Edward]
1925年、シカゴ生まれ。独特の韻を踏んだ文章と、独自のモノクローム線画でユニークな作品を数多く発表している。またエドワード・リアやサミュエル・ベケットらの作品の挿画、劇場の舞台美術なども手がけた。幻想的な作風とアナグラムを用いた(Ogdred Wearyなど)ペン・ネームを使い分けてたくさんの私家版を出版したために、多くの熱狂的コレクターを生みだした。膨大な作品とミステリアスな人物像については『エドワード・ゴーリーの世界』(浜中利信編、河出書房新社)で知ることができる。2000年4月15日、心臓発作のため死去。享年75歳
柴田元幸[シバタモトユキ]
1954年、東京生まれ。アメリカ文学研究者。東京大学文学部助教授
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Hideto-S@仮想書店 月舟書房
100
無菌室で育てられたような〈純粋無垢〉な男の子の短い生涯が淡々と描かれています。信仰心に篤く、穏やかで、朝に夜に両親の元へ「何かお手伝いすることはありませんか?」と訊ねる4歳児。道徳の教科書に出てくるような〈良い子〉です。でも、その手にはなぜかカナヅチが握られています。大工仕事のお手伝いがしたいの? それとも……。思うのは、たとえ辛くても、悩んだり迷ったりすることが生きていくうえでは大切なのだということ。一本道を綱渡りのように歩く人生。その道がどこに続いているか確かめることもなく、彼は逝ってしまったけど。2015/03/07
馨
96
え、どゆこと?と1度では理解できなかったので、皆様のレビューを読ませていただき、絵を注視しながら2回読みました。絵本ですが子供に理解できるのかな。ヘンリーが亡くなった原因についてもいろんな説があるみたいですね。宗教により自分本位になっていく幼子。怖い!2021/03/01
藤月はな(灯れ松明の火)
90
邪悪な魂を持つが故の敬虔な子供が天に召されるまで。しかし、捻くれ者の私にはこの子は神に対しての信仰も敬虔さも全てが「周囲は不信心だけど、僕はこんなにも良いんだ。だから救われる!」というパフォーマンスにしか見えません。本当に慈悲深いなら、どうして上から目線なの?なぜ、親に「何か僕にできることはある?」って訊くのにトンカチを握っているの?そして「悪魔に誘惑に屈しようとしたがいつも後悔していた」って実際、乗って悪いことをしたんですよね。そう思うとこの子は早く、天に召されて良かったんだと思う。色々な意味で…。2016/02/01
ネギっ子gen
82
名高きゴーリーって、こういう感じなんですか……。あらすじとしては、信心深い少年の短い一生とその最期を描いた絵本、てな風になるのでしょうが、訳者は「一筋縄では行かない」本だとして、坊やが<両親を心から愛し、自分に何か出来ることはないかと、朝に夕に訊ねておりました>の箇所を、金槌を手にしている絵であるため、<「邪な子供を殴り殺しなさい」と言われたら素直にほいほい殴り殺しまいそうな勢いではないか>とまで、「あとがき」で書く。絵で見る坊やの“天真爛漫さ”からみて、その読み取りは“異教徒の邪推”となるのかなぁ……⇒2022/01/17
Vakira
80
この作品は題名から、子供の悲惨な物語だと思い、覚悟して読んだ。最初のページでまず驚く。「3歳になって間もなく、ヘンリー・フランク坊やは自分の心が邪(よこしま)であることにもかかわらず神様は彼を愛し給(たも)うことを知りました。」で悲惨な物語ではなく、健気に神に仕える幼児といった感じ。まさに敬虔な幼児。あらたなゴーリー味を知ることができた。Butゴーリーの事だから 自分だけ救われる独善的信念のキャラを創ったのかな?2015/03/15