内容説明
初期作品から『アメリカの友人』、『パリ、テキサス』、『ベルリン・天使の詩』、最新作『夢の涯てまでも』まで、自らの、そして映画の深い始まりを論じるヴェンダースの全貌。
目次
なぜ映画を撮るのか?
時のうつろい 運動の持続
「僕の人生がノン・ストップのハリウッド映画だったらなあ。だってセルロイドのヒーローなら痛みを感じたりはしないだろう…」
主人公は他の人たちである
さすらい
アメリカの友人
リヴァース・アングル―ニューヨーク・シティ 1982年3月
666号室
映画泥棒
かつて映画にどよめいていた声に別れを告げて
物語の不可能性
東京画
計器のない盲目飛行のように
いかにして小さな従属関係は巨大なものになったか
まさに記述不可能な映画の最初の記述
イングマール・ベルイマン(について、ではなく)のために
想像の映画の歴史
天使の息吹
編者〈ミヒャエル・テーテベルグ〉による補足(ヴィム・ヴェンダースインタビュー;ヴィム・ヴェンダース略年譜)
ヴェンダース、ドイツ、そしてユートピア
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
踊る猫
23
ヴィム・ヴェンダースの知性/インテリジェンスが冴え渡る。誰かと群れたりせず、単独で行動して思索を重ねる。世紀末に『都会のアリス』『ベルリン・天使の詩』、あるいはロード・ムーヴィーを発表し続けて映画界を席巻した彼の哲学は、しかし時代の趨勢に流されない(つまり今でもなお読むに耐え得る強度を孕んだ)ものだと言える。だが、バブリーな時代が終わってしまったこと、そして第二の『ベルリン・天使の詩』を求める期待を裏切れなかったことが彼の失速になったのか……と整理したくはない。今のヴェンダースの作品を追いたいと思わされた2019/11/30
geromichi
6
ストーリーを構成するためだけでなく、映像そのものを志向すること、かっちりと固まった上で撮影に臨むのではなく、途中で偶然や思いつきのアイデアを得ながら映画の方向性を見定めていくスタイル。本書が思いのほか良かったので、河出の同シリーズを頑張って集めたいと思う。2021/11/28