無明 内田吐夢

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  • サイズ 46判/ページ数 376p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784309256306
  • NDC分類 778.21
  • Cコード C0074

出版社内容情報

日本映画史上最大の巨匠のひとりでありながら正面から論じられてこなかった監督の軌跡と作品、その核心にはじめて挑む記念碑的な力編

内容説明

無明は暗黒である。逃れようとすればするほど、無明は人を追い、人を誤らせる。内田吐夢は功名心と欲望に囚われ、煩悩に自滅する侍たちを描いた。人間の一切を信じず殺人を犯していく元開拓民を描いた。なぜ彼らはかくも無明の虜となり、際限のない愚行の道を歩むのか。内田吐夢を論じるとは、単に戦前戦後の映画発展史を辿ることではない。『大菩薩峠』から『人生劇場』『宮本武蔵』、そして水上勉の推理長編まで、近代の「国民文学」を通して、日本人の心象の歴史を問うことである。

目次

無明1(満洲流謫;映画界への復帰;『大菩薩峠』;泥とエスニシティ;浄瑠璃と歌舞伎;『宮本武蔵』;『飢餓海峡』;晩年の不遇)
無明2(トム・コメディ;人生の挫折を描く;『土』と農村回帰;大東亜映画をめざして)

著者等紹介

四方田犬彦[ヨモタイヌヒコ]
1953年、大阪箕面に生まれる。東京大学で宗教学を、同大学院で比較文学を学ぶ。長らく明治学院大学教授として映画学を講じ、コロンビア大学、ボローニャ大学、清華大学(台湾)、中央大学校(ソウル)などで客員教授・客員研究員を歴任。現在は映画、文学、漫画、演劇、料理と、幅広い文化現象をめぐり、著述に専念。『月島物語』で斎藤緑雨賞を、『映画史への招待』でサントリー学芸賞を、『モロッコ流謫』で伊藤整文学賞を、『ルイス・ブニュエル』で芸術選奨文部科学大臣賞を、『詩の約束』で鮎川信夫賞を受けた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

koji

12
四方田さんは、私が大きな刺激を受けている文筆家。本書は内田吐夢論です。黒澤、小津、成瀬等に比べて地味な感じですが、「飢餓海峡」で今でも語られる息の長い巨匠の映画監督です。四方田さんが内田吐夢にどう迫るか。この一点で読みました。書き出しは、内田が終戦前満州・満映に渡り中国で辛酸を嘗め、帰国後映画活動を再開する所。その後の作品論は、四方田さんらしく子細に分析します。私が感じ入ったのは、内田のバックボーンとして毛沢東の矛盾論と大乗仏教を指摘した点と不遇な私生活の中でも「自らの生き方」を貫いた点。信念の人です。2019/10/12

パトラッシュ

4
内田吐夢は関心の深い映画監督ではない。「宮本武蔵」五部作や「飢餓海峡」はそれなりに面白かったが、繰り返し観たいとは感じなかった。しかし著者は、強制労働などで辛酸をなめた8年余の中国での抑留生活が内田の映画作りをどのように変えたのかを、戦前作品と比較しつつ丹念に跡付けていく。武蔵が吉岡一門の幼い子供を斬ったり、名士の地位を守るため過去を知る女を殺す男を描く時、多くの死に立ち会った経験がにじんでいるのを明らかにする。歴史に翻弄されながら映画しかなかった内田を、映画を通して描く新しい形の評伝は深い余韻を残した。2019/07/23

r

1
満州以後→満州以前の形式を採った結果、ここで描かれる内田は相当にアイロニカルな終わりを迎える。なにせ思うような渡満でなかったと読者はとっくに判っているから。『血槍富士』の「海ゆかば」は反共アピールという指摘は興味深いが、全篇通じて基本的には従来の読解と変わらないのではないか。『真剣勝負』に一章丸ごと割く本があって然るべきだとやはり思う。つまり、俺は満州に行ったと言いたいだけな気がするのだ。『フェイブルマンズ』で「ねえ俺フォードに会ったことあるんだ」と言うSSのように。対象の映画より面白い映画論を読みたい。2023/12/27

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