出版社内容情報
現代思想を塗り替える思弁的実在論をホワイトヘッドを媒介に論じる名著。メイヤス、ハーマンらを横断しつつ哲学の新しい可能性を拓く
スティーブン・シャヴィロ[シャヴィロ,スティーブン]
アメリカの哲学者。美学、文化理論などを横断しながらラディカルな理論をさぐる。
上野 俊哉[ウエノ トシヤ]
1962年生まれ。和光大学教授。著書『思想の不良たち」『思想家の自伝を読む』『ディアスポラの思考』など多数。
内容説明
人間は特権的存在ではない。すべてのモノたちが平等な世界へ―ホワイトヘッドを甦らせながらメイヤスー、ハーマン、ブラシエなどの思弁的実在論をあざやかに紹介・批判し、来たるべき思想を切り開く定評ある名著。
目次
序章 ホワイトヘッドと思弁的実在論
第1章 自己享受と関心
第2章 活火山
第3章 モノたちの宇宙
第4章 汎心論と/あるいは消去主義
第5章 汎心論がもたらす諸帰結
第6章 非相関主義的思考
第7章 アイステーシス
著者等紹介
上野俊哉[ウエノトシヤ]
1962年生まれ。和光大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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またの名
15
漫画『もやしもん』の無数の菌たちが意識を持ってる世界に近いと訳者が考える、実在論の本。実在論を再興しようとするメイヤスーの哲学では、人間の思考の中にいる限りその外部を捉えられないので人間は用済みとなり、数式やデジタルに還元できる要素だけが残る。しかしこうした数学化こそが資本と欲望と生産と管理のメカニズムを動かしている事実に著者は警戒。人間も動植物もモノもみんな同じように思考したりしてるというハーマンらの実在論に与しつつ、孤立した個体を重視する新しい実在論者たちの間にホワイトヘッドの有機的世界観をねじ込む。2017/07/21
サイバーパンツ
7
SRやOOO、新しい唯物論を著者の問題意識から相互に関連付けて整理したカタログ。入門には厳しいが、本書に出てくる論者を一通り読んだ後に戻ってくるには良いかもしれない。西欧近代の人間中心主義に疑問を投げかけている点からホワイトヘッドをプレ思弁的実在論として参照し、諸対象が不変の空虚の中にあるとするハーマンと根源的な偶然性を必要とするメイヤスーを批判的に検討、最後はカントの美学に立ち返る。データの過剰性を想定し、巧みに描かれた充溢空間として宇宙を見るホワイトヘッドから、赤瀬川原平の「宇宙の缶詰め」を想起した。2019/02/23
EnJoeToh
6
特殊なSF好きは楽しめそうな。2016/07/17
34
5
「思弁的実在論」の思想家たちを、ホワイトヘッドを梃子にして論争的に紹介。思弁的実在論には汎心論と消去主義という二つの潮流があって、共通しているのは反相関主義の立場(相関主義とはカントに代表されるような、人間の思考との相関物にだけ厳密な認識は可能とする立場。要するに哲学的にまともなやつはどいつもこいつも相関主義者)。翻訳のあるメイヤスーに著者はけっこう辛辣。汎心論的傾向の思想家たちはホワイトヘッドと親近性があり(こっちには好意的)、思考の属性と物の非延長的属性のあいだにアナロジーを打ち立てているようだ。2016/12/09
エンピツ地獄
5
カントの有限性を拒絶する運動の徹底した閉鎖性が有限性を再帰させるとして、数種の思弁的実在論を併置。一方、ホワイトヘッド的な汎心論を展開させることによって、内部性=有限性を担保したまま、外部に「美的な」絡み合いを様相させる著者の思弁的美学を対置。経験は意識を前提としないという説を受け入れるにしても、相変わらず、無意識より高いとは言い難い。それ以前に、そのような思弁のプロパガンダによって、言語的次元を再帰させ、思考させられている事態を見極めたい。2016/08/06