出版社内容情報
この危機の時代こそ砂漠へ還らなくてはならない。ル・クレジオ、岡本太郎、マイヨールなどと共に世界の果てを彷徨する新しいエチカ。
【著者紹介】
1955年生まれ。東京外大教授、奄美自由大学主宰。文化人類学、批評家。『クレオール主義』など著書多数。
内容説明
思考と想像力が再生する源を求めて沙漠へ、この砂粒の群島へ還ろう―来たるべき「第二の自然」を生きるためのエチカ。
目次
1 幻を見る人(ふたりのジャック;“わたし”をめぐる揮発性の原理;本を還すための砂漠;ふたたび南に還る)
2 生の贈与(孤独な呪術師の使命;四次元的“日本”;写実という自由)
3 ル・クレジオの王国(誰にも属さない球体の本;歌、記憶の石垣、指のなかの木屑;雲の信者;ことばの氷海へ)
4 ひとの奥処(寺山修司の「来るべき書物」;列島と半島を結ぶ身体;多木浩二の歴史哲学;野蛮人の系譜)
著者等紹介
今福龍太[イマフクリュウタ]
1955年生まれ。文化人類学者・批評家。東京外国語大学教授。「奄美自由大学」主宰(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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踊る猫
20
相変わらず今福龍太の本は豊満だ。悪く言えばそれなりに粗い。寺山修司やル・クレジオを引きながら話題はどんどんレファレンスを多用して多岐に亘り、そして書き手自身も様々なところに出向いて見たものを記録する。小骨が残っていようと素材のレアな味を提供せんと漁師が腕によりをかけて作り上げた料理のよう。この本からもちろんル・クレジオ『物質的恍惚』のような作品に手を伸ばすのもひとつの実験ではあるだろう。私自身視野狭窄になっていたところがあったのでガサツさと紙一重のドライヴ感には励まされるところがあり、また読み返したくなる2020/08/29
gu
7
ちょっと意外だったのは題名の意味で、ここで言う砂粒とはビットやバイトなどの単位、画面の粒子も指すらしい。かつて自然物を表していた言葉がデジタルの用語となり、文明化した、情報化した社会にかえって自然が浸透してきているという。そんなふうに言葉は、あるいは比喩は、ものの性格を変えたり、つなげたり、重ね合わせたりすることができる。本書の中でも、岡本太郎と縄文土器からオクタビオ・パスやロラン・バルトやトリン・T・ミンハが導き出されたり、ル・クレジオと寺山修司とロートレアモンとアンリ・ミショーとレヴィ・ストロースの2017/02/08
matfalcon
2
沖縄、メキシコ、タヒチ、アメリカなどをめぐる岡本太郎、ル・コレジオ、寺山修司らの残したエリクチュールの森。言語学者ならずとも耽溺していたいコトバの海。2016/03/26
しし丸
1
ジャック・マイヨール、岡本太郎、ル・クレジオ、寺山修二、松岡心平、ゴーギャンの残したエクリチュールを巡る「砂粒」への回帰。そして、文化と自然を創造的な合成力により結ばれた「第二の自然」への帰還。この複雑性を紡ぐ美麗なテクスト。今福はいずれも美しい文章を書くが、本の自叙伝『書物変身譚』と並び、本作は際立つ。「美しい文章」というのは非常に形而上的で説明するのが難しいが、最近だと梶井基次郎、庄司薫、石牟礼道子、岸政彦という著者の作品に惹かれる。2016/04/11