出版社内容情報
戦後70年、戦後の問いを総括し、現在の戦争を根底から問い直す。鵜飼哲、椹木野衣、若松英輔、山城むつみ、西谷修、橋本努ほか。
内容説明
戦後70年、いま、戦争とは何か?戦争をどう考えるべきか?問題の核心をとらえる14の視点。
目次
西谷修 戦争の現在を問う
笠井潔 シャルリ・エブド事件と世界内戦
鵜飼哲 「戦士社会」と「積極的平和主義」―アルジェリアから“戦争の現在”を考える
片山杜秀 むかし間違えたことと、いま間違えているかもしれないこと―アメリカと中国のはざまで
加藤直樹 「昭和十九年」を生きる
白井聡 永続敗戦レジームの純化と危機
田島正樹 安全保障をめぐる弁証法的政治
小泉義之 戦争と平和と人道の共犯
山城むつみ 前線から遠く離れて―ヤン・パトチカを楕円化する
橋本努 テロリズムとの戦争
三浦瑠麗 戦争と平和と日本人
椹木野衣 絵画における「近代の超克」と「戦後レジームからの脱却」―成田亨と戦争画
若松英輔 魔王と霊性―鈴木大拙の戦中と戦後
長濱一眞 居心地の悪さ―イーストウッド『アメリカン・スナイパー』試論
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬参仟縁
25
西谷先生によると、戦争の主体は、基本的に国家のような集団という(6頁)。国家の体面、面子を保ちたいがために、イノセントな人が亡くなる理不尽、不条理。戦争は個に対する集団の圧倒的勝利の時(7頁)。社会はそれでもつわけがないけど。笠井先生によると、市民社会を構成する諸個人が、国際政治空間では主権を有する諸国家(30頁)。加藤先生によると、安倍晋三は主観的で他者性がなく、他者性がないから議論ができない。批判には無根拠に力み、逆切れしか知らない。日本を、取り戻す。2015/10/13
勝浩1958
5
国民の多くの人のあいだでは、いま、集団的自衛権や普天間基地問題などを通じて「戦争思想」についてだいぶん関心が高まってきました。安倍晋三首相は、憲法学者が違憲と判断しても無理やりにでも集団的自衛権を行使して「戦争しそう」です。橋本努氏の論考『テロリズムとの戦争』において、ドゥルーズ/ガタリの「通常の戦争が「チェス戦」であるとすれば、テロとの戦いは「囲碁戦」である」という考えを紹介している個所はとても納得がいきました。『永続敗戦レジームの純化と危機』での白井聡節も健在でした。2015/08/14
kri
4
若松英輔目当てで借りた。戦前戦中、日本の伝統的なものとして日本精神を利用し民衆を蹂躙した国家。それは真に霊性のものではないという鈴木大拙の考えを紹介し現代の状況にも警鐘を鳴らす。人間世界の表層を超える霊性の世界では戦争を肯定する事などあり得ないはずだろう。戦争に駆り出す為の大義として利用される「精神」に要注意である。他にも田島正樹、白井聡、椹木野衣を興味深く読んだ。白井聡は大変わかりやすく、自民党政治、安倍政権について良い学びができた。2017/09/02
マウンテンゴリラ
1
国家間の政治の延長としての利害調整のための戦争から、20世紀の2度の世界対戦に象徴される総力戦、そして、現在のテロとの戦争に象徴される非対称な戦争の時代へ。歴史において、奴隷制、王政、共和制、民主制等の政治形態の変遷が、必ずしも普遍的、全世界的なものでは無かったように、戦争形態のこのような分類、変遷も現在の時点から見た、ひとつの特殊な見方に過ぎないのかもしれない。しかし、先にあげた政治形態の変遷には、西洋的偏見無しと言えないまでも、人類としての希望的展開という側面は見られたようにも思う。→(2)2016/09/24
オブ犬
1
フランスのシャルリ・エブド事件のような極めて最近の事件から過去の戦争を見つめ直すものまで、様々な戦争に関する論を集めた本。なかなか興味深いが幅広い代わりに統一感はない。2016/06/22