内容説明
それは日陰地という場所。古地名語源の実証研究。ありふれた言葉の、忘れられた意味を追って。地名の語源を、地形の状況から仮説を立て、例を広げ、実地調査と聞き取りで実証していく。厳密な手法にこだわった地名解読の科学的アプローチの旅。
目次
第1章 「日下」と書いて、なぜ「くさか」と読むのか
第2章 「笠置」は「日陰地」を意味していた
第3章 『日本書紀』の「頬枕田」は円形の田を指す
第4章 「鳥居」のトリとは境のことである
第5章 卑弥呼のような女性のことを「大市」といった
第6章 「国」は「山に囲まれた土地」のことだった
第7章 「山中」と「中山」は同じか、違うか
第8章 「ツマ(妻)」の原義は「そば」「へり」である
第9章 「アオ」「イヤ」は葬地を指す言葉であった
第10章 「賽の河原」とは、どんなところか
著者等紹介
筒井功[ツツイイサオ]
1944年、高知市生まれ。民俗研究者。元・共同通信社記者。第20回旅の文化賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
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tamami
73
著者は民俗研究者。縄文時代以来列島で話されていた言語の実態を探るべく、現在各地に残されている「地名」に注目し、各地を訪ね歩き、関連する地形や地質、謂われなどを総合して、「地名」が示す言葉の意味を探求してきた。本書は研究歴数十年の著者の手による地名と古代語に関わる著作の最新刊。文字がなかった時代の「言葉」について、地名を手がかりに当該地域を実際に見て、仮説を立てては他地域と比較、類推していく手法からは、思いがけない結論が見つかり、現代日本語が見せるほのかな痕跡と共に、「言葉」の深さ・広がりを実感させられる。2024/07/27
あおでん@やさどく管理人
25
タイトルの「日下」をはじめ、いくつかの言葉の由来や原義について、地名やその地形からアプローチを試みる。なるべく狭い範囲を示す地名(小字)に着目する、なるべく多くの同一・類似の地名を探す、そしてほぼ全てが現地取材に基づくなど、方針が徹底されており、主張に説得力がある。地名はその土地の歴史だけでなく、付けられた時代の言葉をも伝えうるということがわかる。2024/09/16
gtn
18
地名を由来を探るためには、「できるだけ小さな地名をえらぶ」ことと著者。例えば、「草」「笠」が付く地名は「日陰地」を指す。著者はそこから、実地に足を運び確証していく。机上の空想より、フィールドワーク。実体験ほど説得力を持つものはない。2024/10/08
真琴
14
これは面白く好奇心が刺激される本。日下、笠置、頬枕田などの地名について、そのつけられた場所の地形から、どうしてその漢字を当てはめたのか、著者のフィールドワークをもとに論じられる。知っている場所もあり今度訪れた時には注意して眺めてみたい。2024/06/17
かわかみ
10
日下とは、大和の草香の地を「ひのもと」という枕詞をつけて呼んでいる内に、枕詞の日下「ひのもと」の方を「くさか」と呼ぶようになったという説を聞いたことがあり、そう思いこんでいた。しかし、著者によると、そのように枕詞をつけて呼んでいたことを示す古文書はないそうである。著者は地名の由来を解説してみせた説には机上論が多くて信憑性が低いとし、フィールドワークで現地の地理的な状況から推測を行ってきた。推論の当否は別としても、齢80を数えながら今も研究を続ける姿勢には頭が下がる。終章の賽の河原の話は意外だった。2024/08/13