内容説明
息子を「売った」母、豆兵士をつくった女教師…「戦争協力者」としての戦時下の女性の姿を、数多くの丁寧な取材を通して書き上げた名ノンフィクションの復刊。平和とは何かを問い直す、いまこそ読むべき1冊。
目次
第1章 息子を「売った」母
第2章 永遠の恋人
第3章 女講師の涙
第4章 『一太郎やあい』
第5章 白いエプロン
第6章 女のいくさ
第7章 見えなかった戦争
第8章 ひとすじの道
第9章 遺書
第10章 栄光のあかし
第11章 千人針は語る
第12章 “朝鮮ピー”
第13章 いなぐや平和のさちばい
重荷 あとがきにかえて
著者等紹介
川名紀美[カワナキミ]
1947年生まれ。ジャーナリスト。70年に朝日新聞社入社。大阪本社学芸部、社会部、95年から論説委員。社会福祉全般、高齢者や子ども、女性の問題に関する分野の社説を担当。2009年、朝日新聞社退社(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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モルク
90
40年ほど前の本の新装版。常に戦争の被害者として扱われていた女性が戦争に積極的に関わっていたこともある史実も確かにある。第1章の「息子を売った母」徴兵から中国に逃げようとした息子の逃亡先からの手紙を憲兵隊に渡した母。大罪である徴兵忌避をすれば非国民として扱われ、家族何より弟妹たちの今後は消滅する。その為に息子を売った母は三國連太郎さんの実母。三國さんは従軍し無事帰国するが、母との関係は…その他積極的に戦争教育をした教師などが描かれる。国、軍部に情報操作された中戦争の真実を知らなかったというのが悲劇を生んだ2024/06/23
がらくたどん
51
祝!復刊(次は文庫化を!毎回せこい)新版が未入手のため実読は旧版。日本は近代戦で女性徴兵を実施していない。太平洋戦争の総括で女性の能動性が強調される文脈は少なく戦争協力は「銃後」という曖昧な括りに投げ込まれて来た中で、女性の戦争協力を「社会に認められる」「発言権を持つ」という文脈で解析した名著。私は若桑の『戦争がつくる女性像』(1995年)の方を先に読んだのだが、そこで語られた戦時役割三本柱の一本「戦意チア」(他に「母性」と「劣等労働力」)の項でサラリと触れられた戦時下婦人団体の統廃合の背景が読み取れる→2024/07/19
ののまる
7
国防婦人会で大活躍した女性が、戦後も自衛隊を「兵隊さん」と呼んで、戦時中の思想そのままで強力な自衛隊サポーターにスライドしているエピソードが、不気味で驚き…。2024/03/04
okatake
1
40年以上前、1982年刊同タイトルの著作を一部改稿、加筆したもの。 40年という歳月を経ても色褪せない歴史的資料。この書で著者にインタビューを受けた方の大半は鬼籍に入られたかと思いますが、この書の再刊により、命が再び吹き込まれました。 帰結は沖繩になるのかなというのが一番の感想。 いつまでも沖繩におんぶに抱っこの日本の現状が続いています。2024/02/21