出版社内容情報
『出雲国風土記』はなぜ『古事記』の、大国主が活躍する出雲神話を無視したのか、日本神話最大の謎をついに解明する。
内容説明
地の果てへ流された神霊。「国譲り」はなかった。古き民は、新興国家ヤマトとの抗争に敗れて三輪の地を追われ、山背へ、そしてイヅモへと追いやられたのだ。『古事記』の出雲神話は何を隠蔽しているのか―。最大の謎の神・オオクニヌシを解明する、戸矢史観の到達点。
目次
第1章 「出雲の神社」に不思議な共通点―東の彼方に恋する神々(出雲の視線はどちらを向いているか;はるか彼方の“元出雲” ほか)
第2章 「出雲の地理」は今も昔も僻遠僻地―地の果てに流された大王(「イズモ」は蔑称である;出雲は辺境である ほか)
第3章 「出雲の祭祀」は特異なスタイル―封印された縄文信仰(「神在月」の嘘;神器の祟りは出雲由来か ほか)
第4章 「出雲神話」は、いずこの神話か―お伽噺の底深くに潜む史実(もう一つの神賀詞;禊ぎから始まる出雲神話 ほか)
著者等紹介
戸矢学[トヤマナブ]
1953年、埼玉県生まれ。國學院大学文学部神道学科卒。神道・古代史研究、作家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
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はるわか
15
「古事記」(712年成立)に収載されているいわゆる出雲神話(ヤマタノオロチ、因幡の白兎、国譲り)は、「出雲国風土記」(733年成立)になく、あるのは国引き神話のみ。出雲大社にオオクニヌシが祀られいるのに、「出雲国風土記」にその神話はない。なぜか。出雲族の氏神・祖神はスサノヲであり、オオクニヌシではない。スサノヲは出雲族が祀った。スサノヲ(出雲族)は蘇我氏のルーツで大和を統べたが、ヤマト朝廷により出雲に追放された。オオクニヌシはヤマト朝廷により滅ぼされた出雲の銅鐸祭祀の王国。祟り神としてヤマト朝廷が祀った。2020/01/17
鮎
7
神話はすべて元となる史実があることを前提に、記紀・風土記・続日本紀などの記述を深読みしすぎず素直に読み込む。改変を疑わせる箇所には、より自然と思われる仮説をあてて丹念に検証する。神社の立地・様式や名に使われた漢字の音訓を論拠にとり、作為の目的を探す過程は謎解きめいて楽しい。道教の影響を背景に据え、御霊信仰の発想から〈古事記が真に慰霊鎮魂したかった者〉を導き出したときに見えてくるもの。古代出雲に大国を夢見る人には要注意の展開をみせるが、私にはとても面白かった。死者には、抱いて眠るための物語が必要なのだ。2018/03/08
乱読家 護る会支持!
3
著者は、大和に元々住んでいた縄文人である出雲人がヤマト王権に負けて、出雲の地に移されたと考える。そして、出雲の王であったオオクニヌシ(もしくはオオモノヌシ)はヤマトにより殺され、祟り神を封じ込めるために出雲大社を作らせたと考えられています。 まあ、ホンマかどうかはわからんけど、なんかそんな気もします。 僕は勝者の神である伊勢神宮になぜか馴染めず、出雲大社や奈良の大神神社に親近感を感じます。それは、敗者の神であり、弱者を支える優しい光のように感じているからかもしれません。 知らんけど(笑)2021/06/28
大臣ぐサン
2
出雲は、出雲であって、出雲でない。なるほどね。出雲は日本史上最大のテーマだ。残された情報はあまりに断片的で様々な憶測を生んできたが、すべては憶測の域を出ない。研究者の数だけ答えがあり、すべてが正しくもあり、間違ってもいるのだろう。どこまで行っても正解にはたどり着かない。我々はその断片から我々の期限に思いを馳せる。それだけでいいのではないか。2019/11/02
みにまい
1
「出雲は辺境である。東京から見て僻遠の地であることは論を俟たないが、かつて都が京であった時には、基本的な手段は限られていたので、物理的に辺境であった。また、その以前の奈良や飛鳥に都があった頃には、さらに僻地で、つまり今に至るまでずっと僻地である。(中略)したがって、古代出雲に一大国家が存在した、などということはないだろう。」この抜粋した文の所で、筆者の考え方に引っかかりを覚えた。最後まで読んだけれどね。2018/01/03