内容説明
「わたしが死なねばならないとしても、きみは生きねばならない」。奪われる家に爆弾を仕掛ける父、木を恐れる子ども、密輸トンネルに閉じ込められた男、瓦礫の下からの独白…。空爆の標的となって殺された詩人が極限の状況下で編み遺した、ガザ・ライツ・バック。作家たちの記憶をつなぐ抵抗の物語集。
著者等紹介
アルアライール,リフアト[アルアライール,リフアト] [Alareer,Refaat]
1979年、ガザ生まれ。パレスチナを代表する詩人のひとり。作家、活動家。ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンで比較文学の修士号を、マレーシアプトラ大学で英文学の博士号を取得。ガザ・イスラーム大学で世界文学と文芸創作を教え、若い世代の抵抗手段として、執筆の力を醸成することに尽力した。2023年12月6日、イスラエル軍の空爆によって殺害された
藤井光[フジイヒカル]
1980年、大阪生まれ。北海道大学大学院文学研究科博士課程修了。東京大学文学部・人文社会系研究科現代文芸論研究室准教授
岡真理[オカマリ]
1960年、東京生まれ。東京外国語大学大学院修士課程修了。エジプト・カイロ大学留学。早稲田大学文学学術院教授、京都大学名誉教授。専門は現代アラブ文学、パレスチナ問題(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヘラジカ
50
当たり前と言えば当たり前なのだが序文があまりにも重く、それ故に読み始めたは良いものの、作品に立ち向かうことが暫くできずにいた。物語は様々な力を持ち、様々な役割を担っている。しかし、どれだけ優れた作品であろうと、この本に収録されているような物語は本来なら生まれるべきではないのだ。この企画で生まれた作家、これから生まれる作家たちが、全く別の現実、全く別の想像で物語を紡げる世界が来ることを祈りたい。2024/12/14
ねむ
12
「現代パレスチナを代表する詩人が編み遺した、ガザの若き作家たちによる23篇」。封鎖下で生きる人々が、故郷・家族・思い出・文化などあらゆるものを奪われる日常を書いた短篇集。視点はパレスチナ人のものだけでなくイスラエル人の兵士や子供のものもあり、作品の長さもさまざま。読書が他者の中にはいって世界を経験し直すことだとすれば、がれきに押し潰されて死にかけている人や、死んだ家族を思う人や、難民や抵抗の闘士やいたずらっ子になることで、圧倒的な現実が全方位から身に迫ってきた。これぞまさに短篇集のあるべき姿だろうと思う。2025/03/07
おだまん
10
パレスチナの詩人によって編み遺されたガザの若き作家たちによる日常になるべきではない日常。この決して幸せではない物語たちを海を超えて知ることができるのはやはり貴重な経験になるのではないのだろうか。幸せな物語が生まれることを願いつつ。2025/02/06
ねこねこ
8
いま、本一冊を隔てて私の隣にあるパレスチナ。現地を生きる若者たちの生きた言葉で、物語の形で届けられることによって、生のパレスチナの様子がより一層肌で感じられた。ガザの中にも格差があること。普通の大学生活やレポートがあること。そのすぐ隣に爆撃が、ライフラインの寸断が、虐殺が、自らの死があること。抵抗。壊されても作ること。帰還すること。何度でも木を植えること。イスラエルが消し去りたいもの。/岡真理先生の解説は重い。ほかでもない私たちの、私の責任を鋭く指摘される。この虐殺を許しているのは私であり私たちだ。2025/02/03
林克也
6
先日の停戦合意後にも虐殺を続けているイスラエル政府が、さきほど、停戦合意したと日本時間で2025年1月18日の朝、報道された。ネタニヤフだけではなく「トランプ」に擦り寄る世界。 昨夜、この本を読み終えた。 一縷の望みがるかぎり、あらゆる手段で”反撃”をすることはとても重要なことだと、改めて思う。 小さなピーターパン。 岡真理さんの、「私たちはどこにいたのか、何をしていたのか、自らに問わなければならない」の言葉が突き刺さる。2025/01/18
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- 和書
- おひさまみたいに