内容説明
結婚は免疫システムによるマッチング、日々の運動量の報告義務、犯罪の物的証拠は体内に埋め込まれたチップやDNA…国家による究極の健康監視システム“メトーデ”に、罪を着せられて自殺した弟の遺志を継いで挑む!近未来サイエンス・ディストピア小説。
著者等紹介
ツェー,ユーリ[ツェー,ユーリ] [Zeh,Juli]
1974年、旧西ドイツのボン生まれ。2001年、デビュー作『鷲と天使』が35か国語に翻訳される大成功をおさめ、現在ドイツで最も高い人気と実力を誇る作家のひとり。国際法の分野で博士号を持つ現役の法曹家でもある
浅井晶子[アサイショウコ]
1973年、大阪府生まれ。京都大学大学院博士課程単位認定退学。J・エルペンベック『行く、行った、行ってしまった』で2021年度日本翻訳家協会賞翻訳特別賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヘラジカ
38
コロナ禍を経て書かれた快作『人間の彼方』の作家による作品なだけに、これもまたパンデミックを経験して書かれた長篇かと思っていたが、なんと原書が刊行されたのは10年以上も前とのこと。少し滑稽ですらあるこのディストピアに、世界全体が大きく近づくことになって作者はさぞ驚いたことだろう。やや理屈っぽく独特な雰囲気をまとってはいるが、ミステリーのような面白さも核にあって、非常に興味深く読めるディストピア文学であった。しかし、近未来SFとしてはシステムをもう少し掘り下げてマクロな視点もある方が個人的には好みだ。2024/07/26
おだまん
11
国家と健康管理。コロナ禍以前に書かれたディストピアであるがそれに追いつこうとしている現実。科学的要素もちりばめられており、最後まで息をつかせないサスペンスも楽しめました。2024/08/23
ののまる
10
ひゃーーー 怖い怖い怖い。でもコロナ期そうだったよな(この小説はコロナより前に書かれているのだけど)。コロナにかかった人は犯罪者って感じの。病気になる人は社会のお荷物で、個人の予防努力が足りない,福祉のお金一杯使わせる邪魔な存在という圧力はコロナ以外でも、うっすらずっとある。介護が必要な老人に対してもある。2024/08/31
トト
3
2050年頃のディストピア未来を描くドイツ作家のSF小説。「メトーデ」とは健康至上主義の究極の社会体制。人間の心身の状態を管理し、毒物の摂取を極端に嫌う。煙草は勿論カフェインもダメなので、飲み物は白湯(にレモンを少し絞ったり)。反メトーデ的謀略の罪で囚われ、国家的裁判に巻き込まれた女性の顛末を描く。マスク警察やら行き過ぎたウィルス嫌悪のコロナ 禍を経験した我々は、簡単に魔女狩りが起きてしまうことを知った。この作品の結末は、まさに国家、社会に対しての個の無力さを感じて怖くなります。原作は2009年の作品。2024/09/13
たぴ岡
2
おもしろかった! 最後に残るのはそれひとつなんだけど、度々理解が難しい単語が出てきたり、慣れない言い回しに出くわしたりと、「本当に読めたのか?」という気持ちにもなる。ストーリーの流れは理解できたし、それがとってもおもしろかった。けど、細かな部分がわからなくて何度か立ち止まってしまった。ひとつひとつの章が短いから休み休み読めていいのかも。言外に示されていることも多くて、結局ラストはどうして? と思ったりもしちゃう。けど求めていたディストピアとSFは浴びられたので、良しとする。おもしろかったし。2024/10/22