内容説明
妻とポルノビデオを作りたいと願っていた作家が、事件に巻き込まれる。似非アーティストの「ゴキブリ」、淫乱のなり損ないの「メス豚」、美貌の持ち主だが無個性な「七面鳥」。ネットでは「予告編」が拡散されはじめ、「メディアの阿呆ども」につけまわされる。性行為において最も重要な「愛」はどこにあるのか。『素粒子』『服従』『滅ぼす』など、世界と人類のダークな行く末を予見しつづける鬼才のスキャンダラスな告白。
著者等紹介
ウエルベック,ミシェル[ウエルベック,ミシェル] [Houellebecq,Michel]
1956年生まれ。1998年、長篇『素粒子』が大ベストセラーとなり、世界各国で翻訳・映画化される。現代社会における自由の幻想への痛烈な批判と、欲望と現実の間で引き裂かれる人間の矛盾を真正面から描きつづける現代ヨーロッパを代表する作家。小説に『地図と領土』(10、ゴンクール賞受賞)など
木内堯[キノウチタカシ]
1983年生まれ。東京大学大学院博士課程単位取得退学、パリ第八大学博士課程修了。現在、名古屋外国語大学准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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どんぐり
81
アムステルダムのホテルで撮影された映像の一部が自分の許可なく予告編に使用され、予告編の削除と映画の公開中止を求めて提訴した作家ウエルベックのポルノ映画『キラク27』をめぐる醜聞。このエッセイで、ウエルベックは映画関係者をゴキブリ、メス豚、七面鳥と罵り、その義憤を顕わにしている。初めから映画出演なんてしなければいいんじゃないと思うけれど、この作家の描く小説世界のようで可笑しい。「私の昔からの敵は、“イスラム嫌悪”の問題に加えて、“ポルノ”という新しい問題に活気づけられ、武者震いしていた」とある。→2024/08/16
やいっち
58
「イスラム嫌悪の諍いの裏で、ポルノ映像出演という最悪の事態に見舞われた著者が赤裸々に描く自己分析的エッセイ」…実に馬鹿げていて愚かしくて、その意味で実に面白かった。ウエルベックらしいと云えばそうなのかも。ファンなら楽しめるかも。2024/06/26
tom
22
ウエルベックが書くものは気になる。だから、ほとんど全部読んでいる。そして、この新作。小説かと思いきや、頁を開いて何のことやら・・。最初は、イスラムに対する不穏当な発言についてゴメンナサイの繰り返し。次のネタに笑う。出てくるのは、自分が主演?したポルノビデオの差し止め裁判の顛末。縷々述べるけれど、契約書を読むと、ネットに公開することを認めている。サインしたときボケていた云々と弁解するけど、そんなもの何の言い訳にならない。おバカだと思って笑う。それにしても、性についての執着とロマンの妄想、これがウエルベック。2024/10/01
やいっち
11
ウエルベックの本は断簡零墨も読みたい吾輩、エッセイの本書も早速入手、庭仕事に頑張ったご褒美に楽しんだ。2024/06/25
garth
9
キラクの運動は彼らが主張しているのとは正反対の意味を持っていた。この運動は、理屈の上では男根の賛美から出発して、あらゆる正常な性行為への嫌悪に行き着いていた……マムシとゴキブリが考え出し、そして実践しつづけたことは、二十一世紀初頭を特徴づけていた、アセクシャリティへの巨大な動きから派生的に生じたものに過ぎない。この大きなうねりは、人口消滅というまったく単純な手段で、現代を崩壊へと押し流そうとしていた。2024/05/30