内容説明
妻とポルノビデオを作りたいと願っていた作家が、事件に巻き込まれる。似非アーティストの「ゴキブリ」、淫乱のなり損ないの「メス豚」、美貌の持ち主だが無個性な「七面鳥」。ネットでは「予告編」が拡散されはじめ、「メディアの阿呆ども」につけまわされる。性行為において最も重要な「愛」はどこにあるのか。『素粒子』『服従』『滅ぼす』など、世界と人類のダークな行く末を予見しつづける鬼才のスキャンダラスな告白。
著者等紹介
ウエルベック,ミシェル[ウエルベック,ミシェル] [Houellebecq,Michel]
1956年生まれ。1998年、長篇『素粒子』が大ベストセラーとなり、世界各国で翻訳・映画化される。現代社会における自由の幻想への痛烈な批判と、欲望と現実の間で引き裂かれる人間の矛盾を真正面から描きつづける現代ヨーロッパを代表する作家。小説に『地図と領土』(10、ゴンクール賞受賞)など
木内堯[キノウチタカシ]
1983年生まれ。東京大学大学院博士課程単位取得退学、パリ第八大学博士課程修了。現在、名古屋外国語大学准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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やいっち
54
「イスラム嫌悪の諍いの裏で、ポルノ映像出演という最悪の事態に見舞われた著者が赤裸々に描く自己分析的エッセイ」…実に馬鹿げていて愚かしくて、その意味で実に面白かった。ウエルベックらしいと云えばそうなのかも。ファンなら楽しめるかも。2024/06/26
garth
8
キラクの運動は彼らが主張しているのとは正反対の意味を持っていた。この運動は、理屈の上では男根の賛美から出発して、あらゆる正常な性行為への嫌悪に行き着いていた……マムシとゴキブリが考え出し、そして実践しつづけたことは、二十一世紀初頭を特徴づけていた、アセクシャリティへの巨大な動きから派生的に生じたものに過ぎない。この大きなうねりは、人口消滅というまったく単純な手段で、現代を崩壊へと押し流そうとしていた。2024/05/30
やいっち
6
ウエルベックの本は断簡零墨も読みたい吾輩、エッセイの本書も早速入手、庭仕事に頑張ったご褒美に楽しんだ。2024/06/25
文化
3
あのウエルベックが新刊を出したというので早速読んでみた。帯にもあるように、ウエルベックはどうやらポルノ映画に出演したことをかなり後悔したらしい。その証拠に、本書ではそれよって自分がいかに傷つけられたかを女々しく告白し、ポルノ映画の監督と女優を徹底的にこき下ろしている。内容は正直読むに耐えなかった。相変わらず差別的な内容を多く含むうえに、自己愛が強すぎて気持ちが悪い。金を出して読むようなものでは無い。そもそも後悔するくらいならポルノ映画に出演するべきではない。2024/06/01
chiro
2
作品を上梓する度にセンセーションを巻き起こす作家のイメージがある著者が映画への出演を通じての愚かな振る舞いを自ら告白するべく発刊したエッセイ。ここに記されている物語は単なるスキャンダルとそれがどういう経緯で起こったかなどの週刊誌的な興味以上に作家自身がどういう心境にあるかまでが詳かにされており、かつその表現の荒々しさと激しさには驚かされる。2024/07/21