内容説明
親友のジャキと恋人のDDに望みをかけ、写真を見つけるために奮闘するマーリ。そこに立ちはだかるのは、復讐を誓う殺された青年革命家、生者と死者を媒介する隠者、爆破テロの犠牲になった博士、冥界最凶の邪神…。陰謀が錯綜し、三つ巴の内戦は激化していく。報復に満ちたこの世界で、それぞれの悲劇が行きつく先は。血と煙と愛でつむがれる、魔術的タイムリミット・ミステリ。
著者等紹介
カルナティラカ,シェハン[カルナティラカ,シェハン] [Karunatilaka,Shehan]
1975年生まれ。作家。スリランカのコロンボに育ち、ニュージーランドの高校、大学を卒業後、フリーランスのコピーライターとして活動。2010年刊行の初長編作品『Chinaman:The Legend of Pradeep Mathew』が旧英国領の優れた小説に与えられるコモンウェルス賞を受賞。2022年、長編第2作である本書を刊行。ブッカー賞を受賞し、内戦下のスリランカの闇を皮肉とユーモアをもって描いた傑作として世界的に高く評価された
山北めぐみ[ヤマキタメグミ]
翻訳者。東京都生まれ。大学では詩の創作を学ぶ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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starbro
168
上下巻、600頁弱完読しました。本書は、突然死後の世界で目が覚めた主人公が、現世に干渉できる7日間の間に、自分を殺した犯人を探すため、そしてスリランカの内戦を終わらせるために奮闘するタイムリミット・ミステリでした。翻訳小説としては読み易いですが、期待したせいか、個人的にはあまり響きませんでした。 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000565.000012754.html2024/01/19
ヒロ
86
1990年、スリランカのコロンボ、内戦の最中で命を落としたマーリ・アルメイダが幽霊となって7日間の間に自分がなぜ死んだのか、生前に撮影した政府の腐敗したスクープ写真を公開するために奔走する内容で、上巻から下巻にかけて、当時のスリランカがどういった国なのかが詳しく書かれていました。本当に数多くの何の罪もない人々が虐殺されてしまった歴史がとても痛ましく思いました。しかしそんな世界を写真で変えられると思って、最後までそれを信じていたマーリ・アルメイダがとてもかっこよかったです。2024/01/29
ヘラジカ
53
疾走感と諧謔を併せ持つ驚異の語り、まるでコミックのような設定と展開が、スリランカの悍ましい暗黒の世界を際立てる。パワフルで粗野でありながら、エモーショナルでとても繊細な物語。トマス・ピンチョンを髣髴とさせるが、同じブッカー賞を受賞し、作者も敬愛しているというソーンダーズ作品も思い起こす。どれだけ荒唐無稽であっても「お話」が持つ伝える力は無限大だ。この作品を読めば必ずや、全く縁がなくともスリランカという国が心の中で存在感を持つだろう。これは凄かった。前評判通り、やはり必読の傑作である。2023/12/26
路地
40
マーリの死の真相と、内戦の裏側にある癒着を曝け出す写真の在処を巡って物語が大きく動き出す。死後の存在が現実世界に働きかける様子は不思議なのに違和感を感じず夢中で読める。はびこる不正が明らかになるかと思いきや、肩透かしを喰らわせるかのように物語は現実世界からフェードアウトしていき、マーリが死後の世界での役割を担う姿が描かれる。現世への心残りが解決され、成仏に向かう様を指しているのかなと思う。2024/06/16
ぽてち
31
下巻は第3の月の続きから始まる。現在と過去が交錯し、マーリのこれまでにしてきたことが明らかになる。そして彼が大切に思う人達に危険が迫る。彼のやり残したことは叶えられても世界はなにも変わらなかった。ついに明かされる彼の死の真相は苦いものだったが、1990年という時代を考えればやむなしか。時間制限のあるゴーストストーリーに歴史や政治を盛り込み、さらには宗教や愛をトッピングしたなんとも豪勢なごった煮小説である。満足感は高い。2022年ブッカー賞受賞作。2024/03/09