内容説明
1990年、内戦下のスリランカ・コロンボ。戦場カメラマンにしてギャンブラー、皮肉屋で放埓なゲイであるマーリ・アルメイダは、気がつくと冥界のカウンターにいた。自分が死んだ記憶はないが、ここに来る前、内戦を終わらせるための写真を撮ったことは覚えている。写真を公表するため、彼にあたえられた猶予は7回月が昇るまで。生者と死者の入り乱れた狂乱の世界をさまよう、マーリ・アルメイダの地獄めぐりがはじまる。ブッカー賞受賞作。
著者等紹介
カルナティラカ,シェハン[カルナティラカ,シェハン] [Karunatilaka,Shehan]
1975年生まれ。作家。スリランカのコロンボに育ち、ニュージーランドの高校、大学を卒業後、フリーランスのコピーライターとして活動。2010年刊行の初長編作品『Chinaman:The Legend of Pradeep Mathew』が旧英国領の優れた小説に与えられるコモンウェルス賞を受賞。2022年、長編第2作である本書を刊行。ブッカー賞を受賞し、内戦下のスリランカの闇を皮肉とユーモアをもって描いた傑作として世界的に高く評価された
山北めぐみ[ヤマキタメグミ]
翻訳者。東京都生まれ。大学では詩の創作を学ぶ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
152
2022年ブッカー賞受賞作ということで読みました。スリランカ人作家の小説は初読です。上巻は一気読み、続いて下巻へ。トータルの感想は下巻読了後に。 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000565.000012754.html2024/01/19
ヒロ
81
内戦中のスリランカの闇を描いたサスペンスかな。でも登場人物は死後の世界の人たちだったりするし、スリランカの当時の様子を皮肉った場面もかなりありましたんで、単なるサスペンスとはまた違った印象です。自分も全く知らなかったんですが、スリランカがこれほどの悲しい歴史をたどっていたんだと驚きました。死後の世界には内戦で亡くなった多くの人がいて、その数だけ悲劇が繰り返されたんだなと、しみじみ感じながら読んでいました。これでまだ上巻なのでまた下巻も読みます。2023/12/31
藤月はな(灯れ松明の火)
55
1990年。当時のスリランカは独裁政権下の反動による民族間憎悪によって内乱状態にあった。戦場カメラマンだったマーリ・アルメイダは突如、冥界にいる事に気づく。自分は殺され、バラバラにされ、沼に沈められたのだと理解したマーリに遺された時間は7日間。色男のゲイであり、元金は決して失わないギャンブル狂、多情で無節操、でも「世界を自分の写真で変えてやる」という信念で行動していたマーリを殺した者は誰だ?その動機は?ミステリーの体を取りながらもスリランカの凄惨な内情が綴られる。恐ろしいが下ネタ炸裂が清涼剤となる不思議。2024/02/18
ヘラジカ
47
日本ではお馴染みの死後世界のプロローグから、面食らうような陰惨な社会を見せつけられる。誰しもが惹き込まれること間違いなしの上巻だ。ただし、人物名や略称を覚えるのはやや難易度が高いと思う。下巻に入れば一気呵成に読んでしまうほど面白いので、これから読む人は挫折せずに少し我慢して欲しい。詳細な感想は下巻へ。2023/12/26
ぽてち
29
内戦下のスリランカで、戦場カメラマンのマーリ・アルメイダに起きた奇想天外な物語。冒頭、彼は冥界の受付にいる。そこで告げられたのは「7つの月が与えられる」だった。死者に残された時間は月が7回上るまで、つまり7日間。その間にマーリは自分の死の真相を突き止め、やり残した使命を完了させることを決意する。第1章は、マーリ及び読者に死後の世界のルールやら時代背景やらを説明するために、長くそして読みにくい。スリランカなんてまったく未知の国で、なんの知識もないから尚更だ。第2章からいよいよ物語が動き出し面白くなってくる。2024/03/08