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出版社内容情報
山村の医師である父と鉱山学を専攻する息子は特異な病と狂気を病む住人たちと出会っていく。世界の暗黒を極めるベルンハルトの名作。
内容説明
「世界は崩潰するような気がします。それとも自ら滅さずにいられないのは自然のほうでしょうか」峡谷の山村を往診で経めぐる医者とそれに付き従う息子、ふたりが出会う患者たちはそれぞれが暗い混沌をかかえていた―。静謐な狂気が果てしなく渦巻く暗黒の巨匠ベルンハルトの長篇。
著者等紹介
池田信雄[イケダノブオ]
1947年生まれ。ドイツ文学者(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイトKATE
25
昏乱(こんらん)という馴染みのない言葉がタイトルとなっている。昏乱とは、分別がなくなって物の道理がなくなることを意味する。本書に昏乱と名付けたのは絶妙だと思った。内容は、オーストリアの山村で医師が色々な患者の診察している中、同行している息子が患者の話を聞き取っている。どの患者も何気ない世間話を語り始めるのに、次第に妄想気味で支離滅裂な話となり、まさしく昏乱している。私はベルンハルト先生の罵詈雑言が好きなので物足りなかったが、サミュエル・ベケットの『モロイ』に似ている所があり、ベケット好きにお薦めしたい。2025/01/04
かわうそ
19
一見論理的だけど実は精神を病んでるっぽい人の心の声が脈絡なく奔流のように垂れ流される後半が圧巻というか何じゃこりゃというか。ここまでくるとそういうものとして受け止めるだけでそれ以上の感想もあまりないけれど面白くないわけでもないのが面白いところ。2023/06/26
hasegawa noboru
18
暗い、徹底してネガティブで死の臭いする底知れぬ闇の深さを漂わせる。救いはないが、1960年代刊行時点の小説でこの救いがたさが記してあるということのみが救いだ。後半「伯爵」の章立て以降半分以上を占めて狂気の伯爵によって繰り出される改行なしの怒涛のことば、長広舌に圧倒される、ベルンハルト節炸裂。<ひとつの国民全体が」と侯爵は言った「何世紀もの間意識不明状態におかれ、その意識不明状態の中で歴史を作っているのが実状だ>大戦以後までのオーストリアをふまえての言だろうが、半世紀以上を経たどこかの国をピタリ予測する。2022/02/04
バナナフィッシュ。
4
外界と交流を持たずにいるとろくなことにはならないな。息子に対する誇大妄想に、周りの人間に対する誹謗中傷、挙げ句の果てには親切な聞き手にまで一言いう始末。こんな身内は嫌だと思うばかりだけれど、普通に考えて精神疾患なのだとは思う。2022/01/03
Ryu
2
ベルンハルトの長編2作目。デビュー作『凍』と同様に、序盤は普通(?)の小説。なんてったって改行がある!しかし中盤、親子が「侯爵」のところに行ってから、延々とそいつがしゃべり続けるおなじみのベルンハルト節が炸裂。なるほど、ここから始まったのだな。やっぱりこうでなくっちゃ。俺は終わりみんな終わり世界は終わりみたいなことを延々言ってるだけなのに、なんでこんなに心地よいのか。雨降る3連休最終日の午後にぴったりの読書だった。2024/04/29